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君の止まり木はたぶん俺で俺の止まり木は必ず君―第15話(第二部)―  大間九郎


家に帰ると河童はいなかった。あったのは滅茶苦茶に荒らされた部屋と鋭い何かで付けられた三本線の引っ掻き傷が無数、そして部屋中を真っ赤に染める血液痕。
何があったと言うのか。
部屋の中を見渡す、河童が抱卵していた大きな座布団の上には血液痕は無い。そして卵も無い。引っ掻き傷、4~50センチあるし三本線の間隔が10センチ程ある。深さは2,3センチあり、こんな傷を付けられるのは地上で熊ぐらいだろう。しかし三本線、熊ではない。では何か? 河童か? 河童には爪が無い、こんな傷は作れない。
やはり人外と考えるほかあるまい。
これだけの血液、人が一人死んでてもおかしくない量だ、しかしこの血液は河童のモノではない。河童の血液は青い。一度喧嘩して額をせん抜きでかち割った時、青い血が噴いたから良く覚えている。河童の血は青い。
では誰の血液なのか?
河童を襲った人外の物だろうか?
分からない。
電気が消えた。部屋の片隅が薄ぼんやり光っている。目を細め見るとそこには青白く光る小さなアマガエルがいた。
「ついていっては駄目」
アマガエルが俺に話しかける。
「ついていっては駄目、それしか望みが無くとも」
「何について行くって言うんだ」
「ついていってはブジャァァ」
「おやおやこんな所にカエルがいましたか、踏んでしまいました。カエルを踏んで2000ドルした革靴が台無しです」
カエルがいた部屋の片隅にはイブニングを着た男が立っている。男? 男だろう。スラリと背が高く細身だが肩幅が広い。男と考えていいだろう。
男の顔は山羊だった、黒山羊、額に五芒星の傷があり血が滴り落ちている。
「申しおくれました。わたくしブラフと申します。以後御見知りおきを」
ブラフは慇懃に頭を下げる。
「では参りましょうか」
「何処にだ」
「何処って決まっているではないですか、貴方が今一番行かなければならない所にですよ」
「河童のもとにか?」
「貴方がそう望むなら」
ブラフが部屋の窓を開ける。窓の外は真っ黒な闇、一センチ先も見えない。
「参りましょうか」
ブラフは窓を通り闇の中に消える。俺の足元で肉片と化したアマガエルが俺に縋り付く。
「いっては駄目」
肉片青白い光を放つ。



※本作はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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『君の止まり木はたぶん俺で俺の止まり木は必ず君』第二部スタート

本日より、
栗山千明賞受賞『ファンダ・メンダ・マウス』の著者・大間九郎の
連作短編「君の止まり木はたぶん俺で俺の止まり木は必ず君」
の第二部がスタートです。

第一部最終話は以下URLより。
http://blog.award2010.konorano.jp/archives/1165109.html

第一部第1話は以下URLより。
http://blog.award2010.konorano.jp/archives/992585.html

第二部第1話は以下URLより。
http://blog.award2010.konorano.jp/archives/1291865.html

第二部からの怒涛の展開をお見逃し無く!


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君の止まり木はたぶん俺で俺の止まり木は必ず君―第14話(第一部完)―  大間九郎

そんなこんなそんなこんなそんなこんなそんなこんなそんなこんなそんなこんなそんなこんな


7月某々々日
河童の抱卵。
一日中卵を抱いている河童、飯も食わない。話かけても返事は無く、体に触ると気だるそうに威嚇してくる。
もう三日目。
「河童、俺は友達と飲み行くけどなんか帰りに買ってくるか?」
返事は無い。
ドアを閉め、家を出る。

少し飲み過ぎたらしい、梅雨が明け夜でも熱く酒が回るのが早い気がする。
大岡川の川縁に腰掛け空を仰ぐ。
いろいろあった、この半年ぐらいでいろいろあった。俺は小説家になるらしい。ライトノベル作家だ。半年前この川縁を歩いていた時そんなことが想像できただろうか? ガキもできた、まだ顔も見ていないが、俺は父親になるらしい。
人生ローリングストーンだわー。
一寸先はマジで読めないわー。
でも俺の人生捨てたもんじゃないかも。
タバコに火をつける。吐き出す煙が湿気を含んだ大気に溶け込んでいく。
転がり続ける石には苔がつかない。
転がり続ける俺には苔がつかない。
転がれ俺、立ち止まるな俺、アンビシャス俺。
血反吐はいても、アイワナビ! アイワナビ! って叫び続けろ俺。
うぬぼれろ俺、ピノキオみたく鼻を伸ばせ俺、気にいらない奴にはキスマイアス! キスマイアス! って叫び続けろ俺。
喰らいつくせ俺、くだらない奴には唾を吐きかけろ俺、分からない奴には力ずくで分からせろ俺。
倒れる時は前のめりだ俺。
支えてくれる奴がいるんだから
手を差し伸べてくれる奴がいるんだから
差しのべられた手には水掻きがついてるけど。
「帰りますか」
 立ち上がり、ケツをはたく。
タバコの吸い殻を指で弾く。
今日は河童の横で寝よう、そうしよう。

―――第一部―― 完





※本作はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

※怒涛の展開!
狂気の第二部は10月18日よりスタート予定!
ご期待ください!

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