ゆらりゆらり

「哀れなお姿ですな」
ブラフが俺の体に針を刺す。
「何もない人間が高望みするからこの様な事になるのです。身の程ですよ身の程、貴方は言葉の通り身の程をわきまえなかったからこの様な苦痛を味わっているのですよ」
ブラフは俺の体に27本目の針を刺す。
「才能が無いのに、小説を書く。何の間違えかそれが出版されようとしている。下らない貴方のエゴが日本中の本屋を汚し、読者を汚す。これは罪ですな」
ブラフは俺の体に28本目の針を刺す。
「つまらない小説、グロテスクで、矮小で、品性も品格も無いただただ文字で空白を埋めただけの様な下らない小説。何も訴えかけられず、何も考えさせられず、感動も、興奮も無く、幼稚な文章をただただ並べたゴミ屑の様な小説。貴方は何をしたかったのですか?」
 ブラフは29本目の針を俺の右耳に刺す。
「有名になりたい。人に認められたい。特別な自分でありたい。子供の様な考えを30を超えた大人が抱いている時点で罪でしょう? 自分は選ばれた人間? 誰にですか? 神にですか? 何故神は貴方を選ぶのですか? なんの取り柄も無く、醜いだけの貴方を何故選ぶのですか?」
ブラフは30本目の針を俺の脇腹に刺す。
「神にだって選ぶ権利は有るのですよ?」

「……………………神なんざ願い下げだ……………………」
「?、なんですか?」
「……………………神なんざ願い下げだ……………………」
「?」
ブラフは俺の口元に耳を近づけ、言葉を拾おうとする。
「神がなんと?」
俺はブラフの喉元に喰らいつく、ブラフは驚き、俺の背中に爪を突き立てる。背中が引き千切られる、それがどうした? ブラフの喉を喰い千切る、口から大量の血を吐き、喉から大量の血を噴き、額の五芒星から大量の血を噴いたブラフはその場にへたり込み動かなくなった。
「肉片」
「何?」
「この鎖をはずせ」
「もう外れているわ」
立ち上がりブラフの死体を蹴りあげる。
「選ぶのは俺だバカ! 才能だって、運命だって、人生だって、神だって選ぶのは俺だバカが! 高望み!? 何も望んじゃいねぇよ! 望まれて此処にいるんだバカが! 世界中が俺の才能を望んでるんだバカが! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ねよ!」
 俺は死体を蹴り上げ続ける。




※本作はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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