ゆらりゆらり
ドアを開けたらそこには小鬼が立っていた。
「なかなか粋がるじゃないか烏。この先どうする? 俺も殺すか?」
小鬼は背の高いスツールに座り、ブランデーグラスを傾ける。
「殺さない。此処を出て行く。俺にはまだやる事があるからな」
小鬼は襟元の蝶ネクタイを緩める。
「そうかい? 河童はどうする? 卵は? 捨てて行くか?」
「捨てていかない。あれは俺の物で俺の一部だからな」
「烏~それは都合が良すぎないかい?」
「都合? 小鬼、お前の都合なんて俺には関係ないんだよ」
小鬼は葉巻を切り、火を付ける。
「烏、俺はお前が好きだ。お前の書く小説もつまらなくて大好きだよ。河童や卵をくれてやっても良いんだが俺にも立場ってものがあってね。何も無しにはお前をここから返せない。代償だ。何か代償をよこせ。それが無ければお前達を現世に戻す事は出来ない」
煙を吐き出す。
「…………代償か」
「そうだ、それに見合う代償だ」
「……………………」
「良く考えろ烏」
小鬼が吐き出した煙が部屋の中を漂う。
「…………宝島社」
「ん?」
「宝島社『このライトノベルがすごい』編集部にTと言う男がいる」
「ん? それがどうした?」
「その男を好きにしてもらって構わない」
小鬼がいやらしい顔で笑う。
俺もいやらしい顔で笑う。
「商談成立か?」
「ああ、商談成立だ」
※本作はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
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