ゆらりゆらり
ドアを開ける。
そこには干からびた河童と床に転がる卵。
「お前の体の一部だろ、好きにしろよ」
小鬼がドアを閉める。
「河童、お前、河童じゃないんだってな」
河童は白濁した目で俺を見る。
「に、にんげん?」
河童が弱々しく俺に手を伸ばす。俺はその手を取り河童を抱きしめる。
「河童、お前がなんでもいいよ。お前が鬼でも何でもいいから俺と一緒にいてくれ。俺にはお前が必要なんだ。愛してる河童」
「にんげん」
「愛してる」
河童の干乾びた皮がズルリと剥ける。瑞々しい白い肌、透き通る白い髪、真っ赤な瞳、額には二本の小さな角、可愛らしい口元から天に突き立つ二本の下牙。
「鬼?」
「人間、俺はだっちゃ?などとは言わんぞ」
「言わんでいいわ!」
「迎えに来てくれたのか?」
「ああ迎えに来た」
「もう、河童では無くなってしまったが良いのか?」
「勘違いするな、俺は河童萌えではない」
「本当か? 疑わしいものだ」
「証明するか?」
「こんな所で~! だめ~! そんな、こんなのだめ~!」
「いいではないか! いいではないか! いいではないか!」
「だめ~! だめ~! だめ~!」
「鬼! 鬼! 鬼!」
「人間! 人間! 人間!」
ピシリッ
無視された卵が青白く光り、亀裂が入る。
※本作はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
http://award2010.konorano.jp/
http://konorano.jp/
http://twitter.com/konorano_jp