ゆらりゆらり
T氏のあり様は酷い。
体中になんか、まぁきっと鋭い爪とかだと思うが、その何かで引っかき傷を作りそれが文字になっている。
額には「はなちょうちん」。右の頬には「守銭奴」。左の頬には「馬並み」。背中にはデカデカと「ぱねぇ!」。腹には「ジーザス・クライスと掛けまして、加齢臭と説きます。その心は? じーさん・くさいっす」。目立つ物だけピックアップしたが体中にはまだ様々な一口ギャグが刻み込まれている。きっとこれは小鬼の部下達がやったものと思われるがナカナカ良いセンスしてる。人間の心を折るにはこのくらい酷いほうが良い。そして傷は結構深く、命に別状は無いだろうが、一生消えないものと思われる。お、この一文気にいった。左大腿に書いてある「このチン毛偽物ですから~! 残念!」。このギャグ一回りして何故だか面白い。左足の裏の「素人童貞だ、間違いない!」までいくと分かり辛さあざとさが出て少し心が萎える。左ケツ「OK欲情」。これは得も言われぬ哀愁を漂わせる。きっと年配の鬼が長年暖めてきた渾身のギャグをT氏のケツにぶちまけた結果、思い切り滑ったのだろう。この文字の傷は他の物に比べて一際深い。南無三。
「ほら~自由にお絵かきしていいんだよ~」
小鬼がまだ書くスぺースが残っている右のケツに「アソパソマソ」の絵を爪で抉る。かなり下手くそ、何故誰が書いてもそれなりになるこのキャラをそこまで下手に書けるのか? やはり三本指がいけないのか? まぁそれは良いとして、T氏を仰向けにし70発ぐらい平手打ち。「う、う~ん」、目ー覚ました、よしよし。「やめてく~だ~さ~い~」、何だまだ寝ぼけてやがる、よし、平手10追加。
「やめてください! 何でもしますから! 言うこと聞きますから! これ以上! これ以上嬲らないでください!」
お~起きた起きた。
「大丈夫ですかTさん!」
「お? おおおおおおおぉぉぉぉぉぉ大間!!!!!!!」
「そうですよ! 貴方の事をいつでも心配している大間! 大間九郎ですよ!」
「大間! 大間! 俺! 俺!」
「大丈夫ですよ! 私が貴方の事を助けだしましたから! 此処にはもう怖い鬼は居ませんよ!」
「本当か! 本当なのか大間!」
「はい! 不肖わたくしめが全部鬼を退治し、この様に鬼質まで取ってT氏の安全を確保いたしました! 此処は安全です! 大間を特別扱いしてるうちはT氏は安全です!」
「そうか~! やった~! やっと! やっと! やっと自由だ!!!!!」
「すいませ~ん。わたくし新しい担当になりますSと申します~。大間さんいらっしゃいますか~。ウヲ! T! お前今までどこ行ってたの!? ウヲ! 何だその体中の面白い怪我は!」
「Sさん! 大間の担当は譲りませんよ! 俺は大間に一生尽くすんだ!」
「いや、いいよ、こんなつまんない小説書く奴の担当スンゲー嫌だし」
※本作はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
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