小樽巡り地獄変~決戦~

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「くらえぃ、俺のダイナマイトを!!」

ジェリコが束になったダイナマイトの導火線に咥えていたタバコで火をつけて、ウンガーに投げつける!
ダイナマイトはウンガーの眉間に突き刺さり、そして爆発した!
緑色の藻が、辺りに飛び散った!

ウンガーがひるんだ隙に、ジェリコは巨大なスパナを構えてウンガーに突貫する!
僕は一生懸命ジェリコを応援した!

「うおおおおお! 殺れ! ぶっ殺せ! 頑張れジェリコ!」

瞳に炎を灯らせて応援しまくる僕の横で、大塚君と明津君が「なに? どうしちゃったのこの人」といった顔で見ているが、現実に動く自分の小説のキャラクターなど今後二度と見れないだろうと思うと、熱の入りようも違うものである!
僕の小説は現状、アニメ化とか……まずなさそうだし……ね……。

だがウンガーもただでは退かない!
その身から無数の触手を飛び出させ、ジェリコのスパナを絡め取る!

「ぬう。こやつ、やりおる!」

ジェリコが苦戦し、少し離れたところでキッズ・ナーが腕を組んだまま叫ぶ!

「これしきで退くとは、情けないぞ、我が弟よ!」
「兄者、見くびってもらってはこまるぜ、勝負はこれからよ!」
「それでこそ我が弟よ! ぐわっははははは!」

ジェリコは己の身に絡みつく触手を腕力で引きちぎり、キッズ・ナーは高笑いを上げる!

明津君が呻いた……。

「なんだか微妙なバトルだぜ……これは原作準拠の展開なのか?
読んでないからわからねぇぜ」

大塚君がそれに答える。

「私も原作を読んだことがないからわからないな。
ちなみに僕は別のところが気になるね。
キッズ・ナーの方は特に何もしていないよね?
あのキャラは登場させる意味があったのかな?
意味のないキャラは無駄な脂肪だよ。切り落とすべきだ」
「なにもしない相棒というのも斬新かもしれないが……」
「斬新かもしれなけど、斬新であるってことは別にそれだけでは素晴らしいというわけではないからね」
「それはそうだぜ。偉大な先人たちがやらなかったことってのは、やっても面白くないってわかってたからやらなかったわけだからな……」
「そうだね。
王道がなぜ面白いのかわかってないと、奇をてらっても上手くいかないものさ。
それにギャグなのかシリアスなのかはっきりしないと読み手はどう読んでいいのかわからない。
今のところ、これではどっちの読み方をすればいいのやら。困った作品だな」

二人の話を聞き、僕は冷静になってしまった。
なんだよ、そんな冷静に評価するなよ……。

「や、やめろよ君たち。
今はそういう話をしている場合じゃないだろう……」

――と、僕が戦いから目をそらした隙に、戦局が動いていた!
ジェリコが触手に四肢を拘束されてしまったのだ!
そしてそのまま宙に持ち上げられ、ウンガーは大きく口を開ける!

「ああ、ジェリコ!」

ジェリコはぽいっとウンガーの口の中に放り込まれてしまった!
だが、キッズ・ナーはなにも心配していない、無駄に男らしい顔で笑った。

「ぐわっはははは。
こやつやりおるわ!
だが我が弟はその程度では破れぬぞ!」

直後、ウンガーの藻の口を押し上げて、ジェリコが出てきた!
そして「ぬぅん!」と気合を上げると、ウンガーの口から飛び出し、空中で一回転すると、かっこうよく地面に着地した!!

しかしウンガーはまだ健在であった!
触手をうねらせながらこちらへ突進してくる!

「う、うわああああ!」

僕と明津君と大塚君は悲鳴を上げ、デシ子は僕らの足元でのびている。
池野中君はいつの間にか距離をとってにやにや笑いながら僕らを見ている。
もうダメだ、僕の人生はここで終わるのだ!

だがジェリコがタバコの煙を吐き出しながら言った。

「これで俺たちの勝ちだぜ、兄者」
「ぬう、どういうことだ、我が弟よ」
「奴の体から出てくるときに仕込んでやったのさ。
特大の奴を、さ」

そして、ウンガーに異変が起きた!
ウンガーの藻の下にある目や口からカッと光が漏れたかと思うと、ウンガーが爆発したのだ!
そして口、鼻、目、耳、穴という穴から黒い煙が立ち上がる!

ちなみに爆発の衝撃でウンガーの頭の上の社長は吹き飛ばされ、運河に落ちた!
水の中に落ちたのだから怪我はないだろう。

ウンガーは弱々しく「ウ、ウンガー……」と鳴きながら転進し、逃げ始める。

ウンガーは運河から出て観光地の方へ逃げ出した……。

キッズ・ナーとジェリコはとどめを刺すべくウンガーを追い、僕らは、死体のように大の字で浮かぶ社長を運河から引き揚げた……。

つづく。




※本作はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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