小樽巡り地獄変~真相
池野中君が社長のほほをはたいた。
「おい、起きろ」
「う……ここは……」
社長が目を覚ます。
僕は離れて見ているが、池野中君、明津君、大塚君はなにやら怒った顔で社長に詰め寄り、ヒラ子はおろおろしている。
社長が頭を振りながら、三人を見上げた。
「あ、貴様ら、無事だったのか」
「無事?
無事と言えば無事だけどな。
それよりなんだ今の化け物は」
「俺だってよく知らん」
「じゃあなんで君がアイツの頭に刺さってたんだよ。
どうせまた君が妙なことをしたんだろ」
「ちょ、なんだよそれは!
俺はな、貴様らが使い物にならなくなってたから一人でなんとかしようとしてたんだろうが!」
「なに?」
社長はおもむろに昨夜の出来事を語り始めた。
※
社長がトイレで席をはずし、ことを済ませて出てくると、店の奥から外へ出て行くコトノハムシを見たそうだ。
コトノハムシ……僕にはそれがなんなのかさっぱりわからなかった。
これについては池野中君が説明してくれたが、デシ子は言葉の神様なのだそうだ。
コトノハムシというのは、神様の使い魔(的な何か?)だそうで、それに言葉を込めると、コトノハムシはその言葉を現実にすることができるとかなんとか……。
とても信じられない話であるが、実際にウンガーが暴れまわる様を見た手前、信じざるを得ない。
それ以外に、この馬鹿げた現象を説明できない。
とにかく社長は、昨晩、居酒屋でコトノハムシを見た。
彼は、なにが起きたのかわからず僕らに声をかけるも、酔っ払いの意味のわからない言葉しか返ってこず、酔っ払ったデシ子にしつこく問いただすと「カーリーさんが自分の小説のキャラが動くとこを見たいって言うからうへへー」という返答。
仕方がないので社長は一人、問題が起きる前にと、コトノハムシを追った。
それは運河まで来ると、突如謎の巨大生命体と二人の巨漢に変身し、なぜか突然戦いを始めたという。
社長はそれらが街を破壊する前になんとか止めようと奔走したが、巨大生命体ウンガーに触手でつかまれ、抜けだそうとしたら落ち、ウンガーの頭に刺さったというわけであった。
※
つまりデシ子は、僕の願いをかなえたということか……。
ということは……もしかしてこれ僕のせいなの?
僕は冷や汗をかきながら社長に謝った。
「な、なんかごめん……」
「いや、あれはそもそもデシ子を居酒屋に連れて行っちまった俺のせいですよ……」
社長はそう言ってくれた。
それから池野中君たち三人に向き直る。
「――というわけだ。
貴様ら頭ごなしに俺のせいと決めやがって!
謝れこの野郎!」
社長は握りこぶしで主張したが、三人は小刻みに震えるばかりであった。
まだ怒っているのだろうか……。
ふいに大塚君がよろよろと社長に歩み寄り、彼の肩に手を置いた……。
「か、柏木……」
「なんだよ」
「君、成長、したんだな……」
「ああん!? どういう意味だよ、それ!」
「デシ子ちゃんを利用するばっかりだった人間のクズの君が、街のために動くなんて……うっ!」
「利用するばっかりって……いや、貴様、そんな一面的な見方してたのかよ!」
次に明津君がポケットからガムを取り出し、社長に与えた。
「これやるよ」
「え? いや……」
「いいから、これやるから」
「はぁ?」
池野中君が明津君の横で言う。
「そうだ、受け取れ柏木。
いいことをしたらガムがもらえると覚えるんだ」
「そうだぜ、そうしたら今後、パブロフの犬的な思考が身につき、ガム欲しさに善行を……」
「き、貴様ら、もの凄くむかつくぞ!!」
僕は、少し離れたところで一連の流れを見ていたが……社長、君は過去になにをやったというのか……。
なかなかそこまで信用されないってことはないぞ……。
ちなみにヒラ子はずっと社長たちの周りで、うろうろおどおどしていたのだった……。
つづく。
※本作はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
http://award2010.konorano.jp/
http://konorano.jp/
http://twitter.com/konorano_jp
---------------第2巻発売決定!予約受付中!--------------
伝説兄妹2! 小樽恋情編 (このライトノベルがすごい!文庫)
著者:おかもと(仮)
宝島社(2010-12-10)
販売元:Amazon.co.jp
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池野中君が社長のほほをはたいた。
「おい、起きろ」
「う……ここは……」
社長が目を覚ます。
僕は離れて見ているが、池野中君、明津君、大塚君はなにやら怒った顔で社長に詰め寄り、ヒラ子はおろおろしている。
社長が頭を振りながら、三人を見上げた。
「あ、貴様ら、無事だったのか」
「無事?
無事と言えば無事だけどな。
それよりなんだ今の化け物は」
「俺だってよく知らん」
「じゃあなんで君がアイツの頭に刺さってたんだよ。
どうせまた君が妙なことをしたんだろ」
「ちょ、なんだよそれは!
俺はな、貴様らが使い物にならなくなってたから一人でなんとかしようとしてたんだろうが!」
「なに?」
社長はおもむろに昨夜の出来事を語り始めた。
※
社長がトイレで席をはずし、ことを済ませて出てくると、店の奥から外へ出て行くコトノハムシを見たそうだ。
コトノハムシ……僕にはそれがなんなのかさっぱりわからなかった。
これについては池野中君が説明してくれたが、デシ子は言葉の神様なのだそうだ。
コトノハムシというのは、神様の使い魔(的な何か?)だそうで、それに言葉を込めると、コトノハムシはその言葉を現実にすることができるとかなんとか……。
とても信じられない話であるが、実際にウンガーが暴れまわる様を見た手前、信じざるを得ない。
それ以外に、この馬鹿げた現象を説明できない。
とにかく社長は、昨晩、居酒屋でコトノハムシを見た。
彼は、なにが起きたのかわからず僕らに声をかけるも、酔っ払いの意味のわからない言葉しか返ってこず、酔っ払ったデシ子にしつこく問いただすと「カーリーさんが自分の小説のキャラが動くとこを見たいって言うからうへへー」という返答。
仕方がないので社長は一人、問題が起きる前にと、コトノハムシを追った。
それは運河まで来ると、突如謎の巨大生命体と二人の巨漢に変身し、なぜか突然戦いを始めたという。
社長はそれらが街を破壊する前になんとか止めようと奔走したが、巨大生命体ウンガーに触手でつかまれ、抜けだそうとしたら落ち、ウンガーの頭に刺さったというわけであった。
※
つまりデシ子は、僕の願いをかなえたということか……。
ということは……もしかしてこれ僕のせいなの?
僕は冷や汗をかきながら社長に謝った。
「な、なんかごめん……」
「いや、あれはそもそもデシ子を居酒屋に連れて行っちまった俺のせいですよ……」
社長はそう言ってくれた。
それから池野中君たち三人に向き直る。
「――というわけだ。
貴様ら頭ごなしに俺のせいと決めやがって!
謝れこの野郎!」
社長は握りこぶしで主張したが、三人は小刻みに震えるばかりであった。
まだ怒っているのだろうか……。
ふいに大塚君がよろよろと社長に歩み寄り、彼の肩に手を置いた……。
「か、柏木……」
「なんだよ」
「君、成長、したんだな……」
「ああん!? どういう意味だよ、それ!」
「デシ子ちゃんを利用するばっかりだった人間のクズの君が、街のために動くなんて……うっ!」
「利用するばっかりって……いや、貴様、そんな一面的な見方してたのかよ!」
次に明津君がポケットからガムを取り出し、社長に与えた。
「これやるよ」
「え? いや……」
「いいから、これやるから」
「はぁ?」
池野中君が明津君の横で言う。
「そうだ、受け取れ柏木。
いいことをしたらガムがもらえると覚えるんだ」
「そうだぜ、そうしたら今後、パブロフの犬的な思考が身につき、ガム欲しさに善行を……」
「き、貴様ら、もの凄くむかつくぞ!!」
僕は、少し離れたところで一連の流れを見ていたが……社長、君は過去になにをやったというのか……。
なかなかそこまで信用されないってことはないぞ……。
ちなみにヒラ子はずっと社長たちの周りで、うろうろおどおどしていたのだった……。
つづく。
※本作はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
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