このライトノベルがすごい!文庫 スペシャルブログ

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2012年01月

緋い三角関係③

特別短編ロゴ3


「――で、これは、何?」
 時間は過ぎ、陽もだいぶ沈みかけたころ。
 調理室ではようやく緋色の前に、二つの料理(?)が並んだ。椅子に腰掛けてその物体を見下ろす緋色は、珍しく頬がひきつっている。
「えへへ、緋色先輩! 私頑張りましたッ☆」
 葵は得意げな表情で胸を張っている。
「緋色せんぱいが元気になれるように、心をこめました」
 桃果は誠実な表情で、胸に手をあててつむぐ。
 黄はその二つの物体Xを、緋色の横に立って見遣ってみる。
 まず、葵の作った料理。何やら黄色いものが団子状に丸まってお皿にのっかっている。一応は料理としての体を為してはいるが、何を作ったのかは不明だ。
「カルボナーラです!」
「どこが?」
「え? どっからどう見ても、カルボナーラですよ! 卵がちょっと固まっちゃいましたけどぉ」
「卵が固まったとか、そういうレベルの塊じゃないと思う」
 どうやら彼女は調理部所属でありながら、料理に関して相当な素人のようだ。 緋色は青ざめ、二つの料理を見下ろしたまま完全に硬直している。その様子を、期待の眼差しで見つめる葵と桃果。
 黄は緋色が不憫になってきた。個性的な後輩を持つと、苦労するんだなぁ、と思った。
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緋い三角関係②

特別短編ロゴ3


 それは、入学直後のこと。
 私、渡瀬葵は、友達になった理沙ちゃんに誘われて部活見学に足を運んだ。まだ部活見学期間ははじまっていなかったけれど、理沙ちゃんはどうやらもう入る部活を決めているようだったので、それの付き添いでついていったの。
 その部活は、『調理部』。
 私はどっちかというと運動が得意だったし、包丁なんて一度も握ったことがない。ぶっちゃけ料理に興味はなかった。けれど理沙ちゃんが一人で行くのが緊張するというので、仕方なく。友達付き合いって大切だよね。
 私たちは二人で並んで教室を出て、校内をトコトコ歩いて調理部の前についた。
 入学して間もないし、まだ授業でも調理室を使用したことがない。この閉じられたドアの向こうに、見知らぬ先輩たちがいるかもしれないことを思うと、緊張で体がピリピリして、身動きが取れなくなった。
 理沙ちゃんも私同様に緊張しているのか、少しの間、二人してドアの前に立ち尽くしていたの。
「あ、開けるよ理沙ちゃん」
「う、うん」
 私は意を決して、ごくりと喉を鳴らして一歩前へと踏み込んだ。
 ドアは――私が手をかける寸前で、ガラリと開いた。驚いた。
 自動ドアだったのか? と思うほど絶妙なタイミングで開いたドアの向こうには、一人の女生徒が立っていたの。
 あまりの衝撃で、めまいがしたのをよく覚えている。
 視界に飛び込んできたのは、高い位置で一本に縛った髪。
 制服の上にエプロンを着用して腕を組んでいるその人は、スカートから伸びるきれいな両足で仁王立ちをしていた。
 私が今まで見たことないくらいキレイに整った顔を険しく歪め、鋭い瞳が真っ直ぐ見つめてくる。
 その眼差しに、突き刺された気分だった。
 頭の中が真っ白になって、身動き一つできなくなってしまった。
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緋い三角関係①

特別短編ロゴ3


 四月なかばの、ある日のこと。
 結城黄は、放課後の星霊学園高等部へと、いつものごとく侵入していた。
 この春、黄もめでたく中学三年生となった。バスケ部所属も変わっていない。しかしまだ数日前に負った怪我が完治していないので、部活を休むように顧問に言われ、暇を持て余した黄は高等部に遊びにやって来たのだ。
 中等部の生徒が高等部に行くことは、特に禁止されていない。しかし黄のように当たり前に歩きまわっている中学生は、そうそういないだろう。
 黄の足取りは堂々とし、慣れたもの。いまだ鼻の頭に絆創膏は貼ってあるが、身体にはもう痛みは残っていないので、動きは軽々としている。
「ふんふふ~ん、もかちゃん、もかちゃ~ん♪」
 微妙に音程を取りながらの鼻歌で、目的の人物の元へ向かっている。いつにも増してご機嫌だ。
 すっかり桜も散って寒さも緩み、上着がいらなくなるくらい暖かくなってきた。心地よい気温で、黄の表情も緩みきっている。
 校庭を横切り、高等部校舎の昇降口にたどりつくと、わざわざ手で持ってきた上履きへと履き替え、いそいそ階段を上がっていく。通りすがる生徒たちが謎の中学生の出没にぎょっとしているが、その視線にも慣れている。黄は構わず、三階を目指す。
 小谷桃果はそこにいるはずだ。
 小谷桃果とは、黄がつい最近知り合った高等部一年生の女生徒である。メガネをかけ、おどおどした大人しい女の子で、しかし意外に芯が強いことも知っている。その桃果を巡っての事件が一段落したばかりであり、彼女の様子を見に行きがてら、一緒に遊ぼうというのが黄の目的だった。
「よっと」
 階段をのぼりきり、三階へと到達。
 長い廊下へと続く曲がり角を折れようとしたところで、その曲がり角で立っている女生徒に目が留まった。
「んー?」
 コソコソ身を隠して、曲がり角の先を覗いている様子の女子。あきらかに不審である。
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特別短編『緋い三角関係』公開!

特別短編ロゴ3


『僕と彼女と幽霊の秘密』の発売約半月を記念して、
またまた喜多南先生による特別短編
スペシャルブログで公開します!

今回は、『僕と彼女と幽霊の秘密』の物語の、ちょっとだけ後のお話。

黄と緋色、『秘密』の新ヒロイン桃果、それにもう一人が登場します!
ちなみにクロはお休みです。
果たして今度は、どんな騒動が巻き起こるのか?

それでは、さっそくこちらからどうぞ!

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僕と彼女と幽霊の秘密 (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫 き 2-2)僕と彼女と幽霊の秘密
著者:喜多 南
販売元:宝島社
(2012-01-13)




僕と姉妹と幽霊の約束 (このライトノベルがすごい!文庫)
僕と姉妹と幽霊の約束
著者:喜多 南
販売元:宝島社
(2011-09-10)




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https://twitter.com/konorano_jp(このラノツイッター) 

黄ちゃんプレゼンツ!『僕と彼女と幽霊の秘密』の秘密

特別短編ロゴ2

icon_kii_small皆さんこんにちはー! 総合司会の結城黄だよ!

icon_shion_smallアシスタントの長谷川紫音です。

icon_kii_small今回は、ただいま絶賛発売中の『僕と彼女と幽霊の秘密』についてのお知らせをするよー!

icon_shion_smallタイトルがややこしいわよね。『僕と姉妹と幽霊の秘密』って間違えてる人、たくさん見かけるわよ。無理もないけど。

icon_kii_smallしおちゃん、いきなりダメ出し!?

icon_shion_smallそもそも『僕と彼女と幽霊の秘密』は、『僕と姉妹と幽霊の約束』の続編なのよね?

icon_kii_smallうん、そーだよ。『約束』が夏から秋のお話で、『秘密』はその翌年の春のお話なんだ。

icon_shion_smallどうして普通に2巻にしなかったの?

icon_kii_smallふふふ、それはね、『秘密』は『秘密』だけ読んでも楽しめるようになっているからなのです!

icon_shion_smallあ、そうなんだ。

icon_kii_small新ヒロインも登場してるし!

icon_shion_small…………。

icon_kii_smallしおちゃん、笑顔が怖いよ……。
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ランジーン×ビザール テイクトゥ⑨(最終話)

ランジーン002

◆9----------------------------------------------◆

 レディオは背中の圧力伝導フィルムから送られてくる情報を脳内に拡散し、収束させることに全精神を集中させていた。

 情報の拡散と収束。

 背中に入る情報はサイレント・タンたちがテレビを見ながら、会場から、スタッフルームに忍びこんで、テレビ中継の中継車を傍受して、俺の体の中に埋め込まれた筋電計や、バイタルチッカーからの情報を読み取って次から次へと送ってきてくれている。三十六枚の圧力伝導フィルムから伝わる情報量は莫大で、俺が目にし、聞き、肌で感じる情報と合わせ拡散させ、収束させる。情報は多いほうがいい、大量の情報は外部環境として俺に意志決定をさせていく。

 人間には思考による自由意思決定は存在しない、存在してもその選択肢はとても少ない。

 人間の行動のほとんどは、外部から入力される情報によって決定される。

 人間の行動は環境が決める。

 この考えに則るならば外部環境である情報は正しく、洗練されていて、膨大であればあるほど、得られる結果は大きなものになることが約束されている。情報なのだ、精査された情報とそれを理解できる脳内環境と、行使できる肉体、最大の結果を得るために必要なのはそれなのだ。
 俺は鎮魂の刃だ、刃であるがゆえに意思は必要ない。与えられた環境に準じ、走り、跳ね、当たり、飛ぶのだ。喉元に届くまで俺は喉元に俺という刃が届くまで走り続ければいいのだ。考えるな、考えろ。委ねろ、委ねるな。自律するな、全てを自律の上に成り立たせろ。矛盾を内包した天秤を丁度平行に保ちながら走れ、走れ、走れ、走れ、走れ、切っ先が喉元に届くまで。
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ランジーン×ビザール テイクトゥ⑧

ランジーン002

◆8----------------------------------------------◆

『さあレースが始まるぜ! 『キング・オブ・デッドラン』が決まる瞬間だ! スタートラインに全四選手が並んだ! 
 第一コース! コーン・ヘッド!!!!! ダッドサン・グッドマン!!!!!
 尖がった頭頂部、変形した頭蓋骨の中に二段の脳を持ち、相互否定型ディベートを永遠と繰り返す生まれながらの鬱系哲学者! 腰仙部にはアクチュエーターとマニュピレーターとしての機能に特化した第三の脳までついているオートマチズムの体現者! 
 二つの脳はどんな鬱系ディベートを繰り広げているのだろうか! 走る前に自殺するんじゃねーぞコーンヘッド!
 第二コース! ケーブル・ガイ!!!!!! コミック・ロドリゲス!!!!!
 脳から頭蓋骨突き抜けて出る無数の極太神経線維を体表に這わせ筋肉に直結! 脊髄反射を無視し完全なる人体マニュアル操作を実現したリミッターカッター! 神経の命令伝達速度を人間の七十倍の速度にまで高めた怪物!
 震えてます震えてます! あまりの脳神経糖質消費量にプロテクターの中にブドウ糖液が仕込まれていつでも補充できるようになっているスウィートガイだ! 瞬発力はピカイチ! 今日もロケットスタート決めてくれよマイヒーロー!
 第三コース! サイレント・タン!!!!! レディオスターゴースト!!!!!
 特徴がまるでないレース運びだが、なぜかいつも上位入賞、ついた名前はゴースト!
 今年度ナンバーワンルーキー!
 もうクラウチングの姿勢に入ってんじゃねーぞルーキー! 観客席に手でも振れよルーキー! 面白くないレースするうえにサービス精神まったくナシ! コケるなよルーキー! 今日ぐらいはしゃげよルーキー! 
 第四のコース! みんなお待ちかね! 復活の貴公子! みんなのアイドル! 今夜の主役はお前で決まりだ! 
 二年前の痛ましい事故から完全復活! 盲目であり音で全てを判断するその鼓膜は潜水艦のソナーより正確で、空気の流れから関節の摩耗音まで捕える驚異の盗聴男!
 ダンサー・イン・ザ・ダーク!!!!!! I・J・フェリオ!!!!!』
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ランジーン×ビザール テイクトゥ⑦

ランジーン002

◆7----------------------------------------------◆

 『ランジーン』のための簡易裁判が行われることとなった。傍聴はできない、裁判期間も短く、一週間以上はかからない。陪審員の三人、弁護士、検察官、裁判官共に『ランジーン』だ。『ランジーン』のための簡易裁判は強姦殺害事件にしては異例の措置だった。それも全て『ランジーン・デッド・ラン』の花形、I・J・フィリオを守るための措置だった。
 弁護側には弁護士が三人、I・J・フィリオの姿はない。
 検察側には検察官、ファウストが座っていた。
 裁判官と裁判長が所定の位置に着席し、裁判が始まる。
「裁判長、検察側は、証言者を呼んでいます。証言の許可をいただきたい」
 ファウストは立ち上がり、証言者の入廷許可を裁判長に申し出る。裁判長は手の甲で顎髭を擦りながら答える。
「検察側の申し出を却下します」
「なぜですか裁判長?」
「検察側から提出された資料の中に、真実とは遠い記載があったからです。神聖な法廷で茶番を演じさせるわけにはいかないですからね」
「茶番? 何を言っているのですか? 裁判長もう一度言います。検察側証人、証言者の入廷と証言の許可をください」
「却下します。検察側の資料によると証言者はサイレント・タンだと記載されています。サイレント・タンはコミュニケーションが他のファミリーと取れません。つまり法廷の場で証言できません、なので却下します」
「裁判長! 我々はサイレント・タンと相互コミュニケーションが取れる方法を開発しています。サイレント・タンとコミュニケーションは正しく取れます。どうか許可してください」
「却下します。サイレント・タンの言語解明ができるようになった? 信用できませんし、そこで得られた証言は証言者の意図とは違う証言に湾曲されて陪審員に伝わるかもしれません。却下します」
「事前に資料でご説明したとおり、レディオ・エステルの開発したプログラムは完璧です。
 つまりは、
 『ラング』(言葉)
  と
 『ジーン』(遺伝子)
  なのです。
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ランジーン×ビザール テイクトゥ⑥

ランジーン002

◆6----------------------------------------------◆
 
 レディオはPCの前で頭を抱えていた。分からない! 言語が解明できない! 昨日かかってきた電話、ファウストはヒトミ・チャンドラを保護できる期間は三日間、そこまではなんとか伸ばせるがそれ以上は無理だと言った。つまり自分がその三日間の内にサイレント・タンとのコミュニケーション方法を確立し、ヒトミ・チャンドラから証言を聞き出せればI・J・フィリオを追い詰めることができるのだ。逆にいえばそれができなければ、姉を殺した男は無罪となり、姉の事件は犯人が分かっているのに迷宮入りする。
 分からない、時間があれば、手掛かりは掴んでいるのだ、もっとじっくり研究できれば答えに到達できるだろう。しかし今は時間がない、昨晩は一睡もしていないが核心に近づくことは一ミリもできなかった。時間がない、明朝早くファウストとの合流場所に行かなければヒトミ・チャンドラに会うことさえできない、時間がない、時間が!
 何も思いつかない。浮かんでくる法則はすべて試したものばかりだ、新しい情報が必要なのだ! 新しい外的環境が! 答えが導き出られるような外的情報が必要なのだ! タブレットの中の映像を再生する。自分の歌う声と喪服姿のサイレント・タンの男が人差し指を衣服に擦りつけ【神ともにいまして】を歌う映像、姉の葬儀の時の映像だ。
 こんなものは何百回と見たじゃないか! タブレットを壁に投げつける。
 自分の人差し指を動かし【神ともにいまして】を歌う。
 こんなことは何百回とやったことじゃないか! 右手で壁を殴る。
 殴った壁には小さな額縁が掛けてあり、そこには姉と自分の写真が飾ってあった。額縁のガラスが割れ、右手の甲をザックリと切った。
 血が溢れ床に零れ落ちる。痛みより熱さを感じる。近くにあった布を手の甲に当て止血をする。
 何をしているんだ、時間がない、こんなことをしても答えまでたどり着けない。時間がないんだ、明日の朝までしか時間がないんだ、外的情報が、環境が、全てが足りない、何が足りないんだ? 何があれば届くんだ? どんな要因があれば情報は拡散するんだ? どの拡散が答えという収束を生むんだ? 分からない、なんで分からないんだ!!
 血が滴る右手をデスクに叩きつける。右手から血玉が飛び散る。頭を抱え、親指の付け根を噛み、レディオの思考は高速に回り続けるがゆえに全くの停滞を生んでいた。
 涙が出る。悔しくて、悔しくて涙が出る。悔しくて、怒りで、憤怒で、自虐で、負の感情の高ぶりが体を支配して涙が目からボタボタと零れ落ちた。レディオは流れ落ちる涙を無造作に右手に巻かれた血だらけの布で拭き、
 
 布で拭き、ふと、布に書いてる文字に目が留まった。
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ランジーン×ビザール テイクトゥ⑤

ランジーン002

◆5----------------------------------------------◆

 姉の葬儀はサイレント・タンの保護区内で行われた。基本保護区、自治区には墓地があり、レディオも姉をその墓地に入れることに異存はなかった。レディオはまだこの保護区に住むつもりでいる。姉と最後にすごした家には姉の匂いが充満している。その匂いが抜けるまで、姉を感じられなくなるまで、レディオはその家を出るつもりはなかった。
 よく晴れた朝、葬儀の朝、墓地の墓の前には三人の男と棺、クレーンと作業員が二人。
 レディオの前で牧師が聖書を読み、レディオの横ではファウストが『ブラックベリー』を弄っている。
「――では祈りの言葉を捧げます」
 レディオは目を閉じ首を垂れる。ファウストは『ブラックベリー』をポケットにねじ込み慌てて首を垂れる。
『天にまします我らの父よ・み名をあがめさせたまえ』
「レディオさん、I・J・フィリオですが」
 ファウストは祈りの言葉の途中、小さな声でレディオに語りかける。
『み国を来たらせたまえ』
「やはり買ってますね、彼は炭で染色されたシルクのシーツを買っています」
『み心の天に成る如く・地にもなさせたまえ』
「ヒトミ・チャンドラとも繋がりがあります。二人は四年前恋人関係にありました」
『我らの日々の糧を今日も与えたまえ』
「異常性癖の裏も取れました。レイプされたコールガールが、ニードルを腕と太腿に刺されたと証言しています」
『我らに罪を犯す者を我らが赦す如く我らの罪をも赦したまえ』
「それと、これは推測ですが、彼、今回が初めてではないと思います。サイレント・タンがここ三年で四人、行方不明になったり死体で発見されています。発見された死体にはニードルで刺された痕跡があります」
『我らを試みに遭わせず悪より救い出したまえ』
「I・J・フィリオ、あれは黒です」
『国と力と栄えとは限りなく汝のものなればなり』
「必ず捕まえます」

『アーメン』
「アーメン」続きを読む
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