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身元確認のため姉の死体を見たレディオは涙も出なかった。そこにあったのは姉とは似つかわしくもない肉の固まりで、この固まりを姉と思うことはレディオにはできなかった。
上肢は肩関節、肘関節、手関節を強い牽引力で割断され、割断された器官は絞り込むような捻じれの力によって捻転されている。
下肢は股関節、膝関節、足関節を強い剪断力によって解離させられ、解離した器官は上下からの圧力により粉砕している。
体幹には直径二ミリほどの穴が数百と空いている。出血の痕からまだ生きている間に太い長さ十五センチほどのニードルで体幹を数百回と突き刺されたことが分かっている。
そして右手の人差し指、ミライザが唯一体の外に内部情報を発露できる器官が毟り取られている。
レディオは姉がどのように殺されたのかを検死官から説明された。数十回と顔面部を殴られ、逃げたり、抵抗する意思をそがれレイプされる(精液は検出されていない)。レイプされたまま、体に何百回とニードルを刺される(死亡原因はこの時ニードルが肝臓門脈に刺さり、出血多量によるショック死)。まだ生きているうちに数十ヶ所を噛まれ、引き千切られる(引き千切られた肉片は発見されておらず、犯人が食べてしまったものと考えられる)。死亡した後犯人は上肢を関節ごとに引き千切って捻じり、下肢を関節ごとに引き千切って潰す。
なんだこれは? レディオは説明を受けながら、姉におきた恐怖を少しずつ受け入れ始めていた。姉の死体を見た時はあまりに直接的過ぎて理解できなかったが、言葉として整理されて、情報として入力された真実はあまりに残虐で悲劇ではなく完全にホラーだった。
警察署の廊下の長椅子に腰掛けレディオは床を見つめていた。まるで何も考えられない、この先のこと、この先何をすればいいのか、まるで何も考えられない。
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