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2014年01月

特別短編『レインボーフレンドシップ』③

特別短編タイトル12










《3》

 卵焼きは置いておく。次に立てた作戦は傘だ。
 雨の日に傘をさして登校したものの、その傘が帰りには無い、なんてことになっていたらどうだろうか。空はまだ雨模様で傘が無ければ困ってしまう、なのにどこかの誰かが持っていってしまったようで、弱っているところへクラスメイトがやってきて「どうしたの酒己さん。え? 傘を盗まれた? それは大変、私の傘に入って一緒に帰りましょう」とくれば、鉄のハートも溶けるというものではないか。
 幸いにして季節は梅雨時だ。作戦の立案後二日で空はぐずつき始め、登校風景では色とりどりの傘が並び、鬱陶しい雨を嘆き合う生徒達の中で香織は一人ほくそ笑んでいた。
 登校時間を達子に合わせ、さらに玄関前でだらだらと時間をかけて靴紐を結び直したり雨露を払ったりして時間を調整し、達子が来るのを確認してから教室に向かった。達子の傘、傘立てのどこにさしたかをしっかりと確認した。これで準備は万端だ。
 授業中、気分が悪いと手を上げて心配されながら教室を後にし、誰にも見られていないことをしっかりと確かめた上でレイン・ポゥに変身、玄関に走って達子の傘を下駄箱の隙間に押しこみ、次は保健室前に走って変身を解除、その後は三十分間保健室のベッドで横になっていた。
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特別短編『レインボーフレンドシップ』②

特別短編タイトル12










《2》

 香織を魔法少女「レイン・ポゥ」にしてくれたトコは、同時に様々なことを教えてくれた。戦い方も生き方も、外国語やテーブルマナーに至るまで、種々雑多でいつ必要になるのかもわからないことまで全てを叩きこんでくれた。
 だが「誰かと友達になる方法」はそこに無かった。
「わたしってさー。友達が必要だったことってないんだよね」
「トコってぼっちなの?」
「孤高なのよ、孤高の妖精。つるむ相手が必要ないの」
「でも同窓会には呼ばれなかったんだよね?」
「『良さそうな魔法少女候補を見つけたら絶対トコに見せるな』とか『トコが美味しそうな話持ってきても聞いちゃダメ』とか『トコは半径五メートル以内に近寄るな』とか、そういう誹謗中傷を受け続けてもくじけることなく頑張り続けたのがトコさんよ」
 その流れでなぜドヤ顔になるのかよくわからない。寂しい一人ぼっちなのではなく、孤高の嫌われ者であるといいたいのだろうか。
「というわけでレイン・ポゥは頑張って友達になってね。わたしはその間に他の子を見ておくから」
「頑張ってっていわれてもなあ」
 習いはしなかったが、友達を作ることができないわけではない。各種成績を調整し、クラス内での立ち位置を整え、羨ましがられず、妬まれず、馬鹿にされず、笑われず、それでいて空気にならず、自分も相手も不快にならないポジションにつく。人間関係についてなら師匠であるトコよりも上手くやってのけるという自信はあった。
「ええっと、名前は酒己達子……だっけ。一年生なんだよね? どこのクラスの子?」
 トコがおかしなものを見るような顔で香織を見返した。
「レイン・ポゥと同じクラスだから頼んだんだけど……」
「え? マジで?」
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特別短編『レインボーフレンドシップ』①

特別短編タイトル12










《1》

 上段回し蹴りを避けることができなかった。
 虹を出すことはできない。つまり虹で攻撃を防ぐことはできない。必死で腕を顔の横まで上げる。頭部を刈り取らんと放たれた一撃は、腕一本挟んだくらいで勢いを殺しきることができず、ガードもろともに跳ね飛ばされた。
 背中でブロック塀を砕き、それでも止まらず、ゴロゴロとコンクリートの上を転がる。虹さえ出すことができればガードもできたし反撃もできた。無様に転がることもなく虹で身体を支えることだってできた。当たり前のようにできていたことが、今はできない。
 出ろ。走れ。何度念じても虹は出ない。真っ暗闇の中で自分の姿さえ見ることができない。それでも虹が出ればわかる。出ていないのも当然わかる。
 空気の揺らぎと落下音を感じて腰を曲げ身を縮めた。
 一瞬前まで頭があったところをなにかが通過し、コンクリートの路面に打ちつけられた。破片が飛び散って顔にぶつかる。打ちつけられたなにかに手を伸ばすが、するりと抜けられた。気配が闇に溶ける。音も聞こえない。
 視線だけは感じる。相手が一方的にレイン・ポゥを見ている。
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特別短編『レインボーフレンドシップ』公開!

特別短編タイトル12










ご好評感謝企画『魔法少女育成計画limited』発売記念特別短編、
いよいよラストの第4弾掲載です!


今回の主役は魔法少女「レイン・ポゥ」。
『魔法少女育成計画limited』が始まる少し前のお話です。
レイン・ポゥ=香織は、どのようにして魔法少女「ポスタリィ」=達子と
仲良くなったのでしょうか?


特別短編第4弾、『レインボーフレンドシップ』はこちらからお楽しみください!


なお、ここまでの特別短編は、以下のリンクからどうぞ!
第一弾『ゴーグルと亀』
第二弾『とっととミュージック』

第三弾『魔王を討伐したいから』

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特別短編『魔王を討伐したいから』③

特別短編タイトル11










《3》

 動画を中断し、ファヴは魔法の端末から表に浮かび上がった。当然動画を見る前となにも変わってはいない。クラムベリーの部屋の中だ。
 ベッドの上から左右を見回しても家具はない。コンクリ打ちっぱなしの部屋が寒々しく、それは実にクラムベリーらしかった。
 動画の製作者には色々といいたいことがあったが、それはそれとして魔王パムの弱点を掴んだ。ここを突けばクラムベリーはきっと勝利する。
 ファヴはクラムベリーと相談して策を練った。
「というわけでこんな作戦を考えたぽん」
「なるほど。いいんじゃないですかね」
「策をもって戦いに臨むなど惰弱! ……なんてことはいわないぽん?」
「漢字にルビを振った格好良い必殺技名を考えろという無茶なお達しがありまして。色々面倒臭くなりました。早急に解決できるなら私に否はありませんよ」
 クラムベリーはクラムベリーで大変だったようだ。
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特別短編『魔王を討伐したいから』②

特別短編タイトル11










《2》

【外交部門の提出書類は規定の形式に沿って作らなければならない。それは魔王パムであっても例外ではない】
 魔王パムがノートパソコンに向かっている。どうやら今後の訓練計画について打ちこんでいるようだが、タイピングが覚束ない。左右の人差し指を一本ずつ立てて、一文字一文字打ちこんでいるが、それでも時折失敗して「ああ!」「そっちじゃない!」なんてことを叫んだり、「これどうやって消すんだろう」「元のページに戻す方法は……」なんてことで止まったりと一向に進まない。
 場面が変わった。
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特別短編『魔王を討伐したいから』①

特別短編タイトル11










《1》

 魔王パム調査班は、今まで誰も成し遂げた者がいない「魔王退治」を成功させるべく結成された。ただしその真なる目的は、首謀者である電子妖精ファヴ以外知る者はいない。
 ファヴにはお気に入りの魔法少女「クラムベリー」を魔法少女試験の試験官に就かせるという大願があり、それを成就するための「魔王退治」だった。
 魔法少女試験の試験官は、通常ベテランの魔法少女が務める。才気に溢れるだけでは、新人が試験官を務めることはない。ファヴには新たな試験官を推薦をすることはできたが、新人を推薦したところでその意見が掬い上げられることはまず無いだろう。新人が試験官になるという横紙破りを果たすためには、相応の殊勲が必要になる。
 その殊勲が「魔王退治」だ。退治といっても殺害や勝利が目的ではない。一撃入れればそれでいい。
 魔王パムは強者として名高く、百や二百ではきかないとされる武功を誇り、その強さに惹かれて彼女の元に集った魔法少女達を指導鞭撻し、さらなる高みへ導いていた。
 その集団は通称「魔王塾」と呼ばれ、強さを求める魔法少女ならまずそこへ向かうべしとされている。私的な集いでありながら、ある種の独立した共同体と化し、上層部には「武力を一箇所に集めていいものか」と危険視する者もいたが、パムの所属している外交部門が「サークル活動なので問題無し!」と片付けていたため、それ以上口を挟まれることもなく、今日も彼女達は強さを追い求めて青春を謳歌している。
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特別短編『魔王を討伐したいから』公開!

特別短編タイトル11










年が明けて半月ほどが過ぎました。非常に今さらですが
あけましておめでとうございます!
本年もよろしくお願いいたします。

というわけで、更新が遅くなりましたが、ご好評感謝企画
『魔法少女育成計画limited』発売記念特別短編
第3弾の掲載です!


今回メインを務めるは「魔王パム」。
魔王パムと森の音楽家クラムベリーとの
師弟関係についての物語になっております。

特別短編第3弾、『魔王を討伐したいから』はこちらからお楽しみください!

第4弾は来週公開予定です!


なお、特別短編第1弾と第2弾は、以下のリンクからどうぞ!
第一弾『ゴーグルと亀』
第二弾『とっととミュージック』



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魔法少女育成計画 (このライトノベルがすごい! 文庫)
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販売:宝島社
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