ランジーンビザール

【4】
 このお漏らししたおしっこだらけのパンツを交換するだけの儀式になんの意味があったのだろう? 私は差し出されたパチントンDCのビショビショのパンツをはいて、パチントンDCは私が脱いだビショビショのパンツをはいて、なんとなく二人とも気持ちが悪いから立っている。会話はない、もう話すことなんて存在しない、口もききたくないし、パンツが濡れていることが不快すぎて実際私は立っているのもやっとってところだ。
 そういえば衝撃的な体験に惑わされて忘れていたが私たちは殺されるのを持っている途中だった。もうパンツの不快さ加減で、早く殺すのなら殺して欲しいぐらいだが、まだまだ時間はかかるのだろうか? もうお日様は天高く上がりお昼はとっくに過ぎているはずなのだけれど一向にこの広場には誰も集まってこないし、私たちを連れて来たドワーフマンも様子を見にすら来ない、本当に殺されるのだろうか? いやここまで無視され続けるとそんなことすら考えてしまう。しかし暑い、太陽の光をさえぎる物がないからすごく暑い、これはパンツが渇くかもしれないと思いワンピースをまくり上げてパンツを太陽に当てていたらすごい熱視線をパンツに感じた。パチントンDCが私のパンツにすごい熱視線を浴びせかけている。お前、このパンツお前のだぞ、お前結構なんでもいいのな。そんなことを考えながらパンツを太陽の光に当てていた。

 タン。

 乾いた銃声が聞こえた。そう遠くではない感じだがここからは誰が引き金を引いて、誰が撃たれたのかは視界に入らない。
 パチントンDCが銃声と共に肩をビクッてさせた。その仕草が少し、可愛いかなって思った。
 
 タン。

 もう一度銃声がする。また視界には入らない。

 タンタンタン。

 三回連続で銃声がしてパチントンDCがへたり込んだ。
「処刑が始まったんだ」
 頭を抱えて震えだす。
「処刑が始まったって私たち以外にも捕まっている人っているの?」
「僕、ここに連れてこられる途中、そこ、」
 パチントンDCは目の前の道を指さす。
「そこ、まっすぐ行ったところにある公園で十人ぐらい捕まっているのを見たんだ」
「十人くらい? みんな私たちみたいにママが死んじゃった人?」
「それだけじゃないと思うよ、見るからにスメル・リトルっぽい目も耳も縫い付けてある人もいたし、オウヴァ・ラヴァの人もいた、お腹に大きな袋があったから」
「なんで? なんで『ランジーン』の人が殺されなきゃいけないの?」
「分からないけど、僕思うに、ドワーフマンの人たち貰える補償金を独り占めしたいんじゃないかった思うんだ。
 オウヴァ・ラヴァ、
 スメル・リトル、
 ドワーフマン、
 三つのファミリーが共同で自治区を作ってもらっていたけど、基本この自治区の収入って補助金とドワーフマンの人たちの鉱物採掘に頼っているんだよ。だからドワーフマンの人たちはほかの二つのファミリーを疎ましく思ってるんだ。
 今回の暴動を機に自分たちだけの自治区にしたいんじゃないかな?」
「でも自治区申請するには数が足りないから三つのファミリーで合同自治区にしたんでしょ? 数が減っちゃったら困るんじゃないの?」
「東海岸にいたドワーフマンたちがこっちのファミリーに合流するって話聞いたことない?」
「ないよ」
「東海岸にもドワーフマンのファミリーがあるんだ、そこ自治区を持っていないんだけど、百人くらいいるらしくて、今ここにいるドワーフマンと合わせると三 百人は超えるよね、三百人以上いれば自治区申請ができる。もうドワーフマンにはオウヴァ・ラヴァもスメル・リトルも必要ないし、邪魔なんだ」
「多く殺せばその分保証金も多く出るし?」
「そう、僕たちみたいな準・市民じゃなくて、『ランジーン』が死んだら出る保証金もおっきいしね、取り分は殺せば殺すだけ多くなるんだよ」
「人間でも、『ランジーン』でも殺される理由は変わらないんだね」
「そう、僕たちは人間だから殺されるけど、それは合っていて合っていないんだ。僕たちの殺される理由は『ランジーン』じゃないから、じゃなくて、ドワーフマンじゃないからなんだ」
「本当に下らない理由ね」
「生きていると『ランジーン』も人間も変わりなくお金が欲しいって僕は思うよ。
 誰かに束縛されたくない、
 自由に自分の意見だけで、
 自分の決定だけで生きたい、
 法律に縛られたくない、
 誰かの言うことを聞きたくない、
 だから自分たちの国が欲しい。
 人間に人種や種族や民族があるでしょ。そのすべての固まりが同じように考えてるんだと思う。薄まって、国っていうカテゴリーのコミュニティーに依存して、分からないようにして誤魔化してはいるけど本当はみんなそう思ってるんだと思う。
 だからなんだと思うんだ。『ランジーン』は生まれたばかりの人種なんだ。
 生まれたばかりの人種で、姿形と習慣が今迄の人間に比べて特殊でより変わってる。
 だからファミリー内の結びつきが強いし自分たちのコミュニティーの拡大と安定を望んでる。
 人間なんだよ、『ランジーン』は人間じゃないように思って人間じゃないから保護して、人間じゃないから保障してそうやって突き放しておかしくなったんだ アメリカの『ランジーン』は、僕は思うよ、アマンダ・テールノーズ達は失敗したんだ、『ラビット』は失敗したんだ。アメリカに、この特殊な国に、拳銃を 持った赤ん坊に間違った決断をさせたんだ。『ラビット』はアメリカに『ランジーン』を受け入れろって言ったけど、それは違うんだ。受け入れるんじゃなくて 『ランジーン』は外から来たわけじゃなくて、『ランジーン』は中から湧き出てきたんだ。受け入れるんじゃないんだ。それは強者が弱者にかける言葉なんだ。 アメリカ国民が『ランジーン』を受け入れるじゃ駄目なんだ。それじゃアメリカ国民と『ランジーン』が別物になっちゃうんだ。
 受け入れちゃダメなんだ。
 だって元々『ランジーン』は人間で、アメリカ国民なんだから。
 ドワーフマンは自分がドワーフマンだってことでしかアイデンティティが保てない、なぜなら『ランジーン』はアメリカ国民じゃなくて、ドワーフマンはアメリカ国民じゃないって認識しているからなんだ。
 だから自分たちの利益になることしかできないし利益になることならなんでもしちゃうんだ。自分たちのコミュニテイーのルールが絶対になっちゃうんだ。
 だから殺すことを厭わなくなっちゃうんだ」
 力説しているパチントンDCはほっておくとして、つまりは死ぬ瞬間が近いってことだよね。もうすぐ死ぬのか、死ぬまでにパンツが渇きそうな勢いで暑いか らとりあえずワンピースの裾は下ろさずにパンツは出しっぱなしにしておこう。すごい熱弁をふるっていたパチントンDCも熱弁をふるいながらも視線はパンツ に熱視線だったので本当は『ランジーン』とアメリカ合衆国国民との関係なんかよりパンツのほうが大事なんだろう。
 しかし死ぬのか、死が怖くないわけじゃないけど、思ったより怖くはないっていうのが感想としてある。まだ死を見てないからだろうか、自分に降りかかる死 を直視してないからだろうか? 昨日の夜燃えている人がとても怖かった、人と思うと怖くて怖くてたまらなかった。今日の朝ママが死んで、袋の中にママを殺 した男の手が入って来たとき怖かった、怖くて怖くて仕方がなかった。
 しかし今、私は迫りくる確実な死を感じながらそれほどの恐怖がない。恐怖が全くないわけではないが、あの時のような歯がギチギチなったり体中の力を入れてないと恐怖に呑まれそうになったりって感じではない。
 なんというか、死ぬ時痛かったりしたらやだなとか、辛かったりしたらやだなとかって恐怖はあるが、死んで、自分という存在がこの世の一員でなくなること が、目が見えず、耳は聞こえず、眠りから覚めず夢も見ず。思考を一切しなくなって息をしなくなって自分という存在がまったくなくなることに対して私は恐怖 がない。ない気がする。
 これは良いことなのだろうか?
 死を待つ身として正しい感情なのだろうか?
 なんてことを考えながらパンツを日光に当てていたらしゅるしゅりしゅるって感じでゆるゆると白煙をあげながら何かが頭の上を通って行った。
「あれ何パチントンDC?」
「へ? 何見てなかった、ごめん」
 そりゃ見てないか、ずっとパンツ見てたんだもんね。なんだろうあれ?って感じで白煙をあげながら進んでいった何かの行った先を目線で追っているそこには 自治区内で一番大きな建物、自治区庁舎があって、あ~自治区庁舎だ~って思っていたらいきなり爆発が起きてドカーンって感じで自治区庁舎が粉微塵に吹き飛 んだ。
「ウヲー! スゲー! 今の見たパチントンDC?」
「へ? 何? ごめん」
 お前どれだけパンツが好きなんだよ、お前のパンツだぞこれ。
「今、自治区庁舎に何かが飛んで行って吹き飛んだんだよ!」
「あ? ああ、すごい音したもんね、ってあ? ああ!? スゲー! 自治区庁舎なくなってる!」
「でしょ! 言ってるじゃんさっきから! なんか白い煙を出しながら空飛んでるのが自治区庁舎に突っ込んでスゴイ爆発が起きたんだって!」
「マジで! UFO!?」
「そりゃないでしょ! 何か分かんないけど攻撃されたんじゃないの!?」
「そりゃいい気味だね! 死ねドワーフマン! みんな死んじゃえ!」
「いいねーパチントンDC! いけー! やれー! みんな死んじゃえー!」
 私たちの応援に応えるように白い煙が出てる何かは私たちの頭を超えて七個? いやもっと? どんどん飛んでいく。落下してから少し間があってチュドーンて感じで爆発してその後燃え上がって自治区をどんどん火の海にしていく。
「いやもうこれ戦争でしょ!」
 すごく興奮しているパチントンDC。
「戦争でいいよ! 戦争で全部壊してみんな死んじゃえ!」
 負けず劣らず興奮している私。
「ノ~! 俺めがけて落とせ~!!」
「かっこいいー! 私もやるわ! 俺めがけて落とせ~!」
「俺めがけて落とせ~!!」
「俺めがけて落とせ~!」
 天に向かって叫びまくって、それに答えるように白い煙を出しながら飛んでくる何かはどんどん飛んできて自治区を真っ赤に燃やす。
 興奮して体をブルンブルンしていたらブルンて感じで手に絡まっていた縄が抜けた。
「あれ? あは、パチントンDC私の縄抜けた」
「すごいじゃん! 僕のも抜けるかな?」
 パチントンDCが両手をブルンブルン上下に振りまくってたらスポンって感じでその反動で思いっきり尻餅をつくパチントンDC。思いっきり笑った、二人で転げ回ってお腹が切れるくらい思いっきり笑った。それで立ち上がって二人で手を繋いで走り出した。
 どこへって? そりゃ殺されないところへってことでしょ?
「とりあえず自治区の外に出よう」
「うん、パチントンDCは自治区の外に出たことあるの?」
「ないよ、あるかもしれないけど記憶にないよ、君は?」
「うん、私も記憶にはない」
「どんなところかね?」
「外か、どんなところか知らないけれど、ここよりはマシよ」
「そうでね! 殺されないしね!」
「そうよ! 殺されないだけマシよ!」
 私たちは手を繋いで自治区の中心街を抜けて自治区と外を隔てる金網のフェンスまで来た。自治区の外に出るには街の正面のゲートを通るのが普通なんだけどそこの近くを通ったらドワーフマンがいっぱいいて外に逃げ出す途中だったから、そこを通るのは諦めた。
「高圧電流とか?」
「それはないよ、ただの金網、登って外に出るだけさ」
 パチントンDCがニコッて私に笑いかけてフェンスに触れるとバチバチバチって音がしてパチントンDCは痙攣しておしっこ漏らしてぶっ倒れた。何がそれは ないよニカッだよ、思いっきり高圧電流が流れちゃってるじゃんよ。繋いでいた手を放しておいて本当に良かった。痙攣するパチントンDCはほっておいてどう しようか考える。
 やっぱり正面のゲートは無理だ。あそこにはまだドワーフマンがたくさんいるし捕まったらその場で殺されちゃう。でもそれ以外出入り口がこの自治区にはないしフェンスはぐるり一周してるし、高圧電流はきっとどのフェンスにも流れてる。
 町は燃えてるし、誰が攻撃してるのか分からないけど私たちだって敵に見つかれば殺されると思う。どうしよう? このままここにいても燃え死ぬか殺される。でも外に出るにはこのフェンスを登らなくっちゃいけないけど高圧電流が流れてる。どうしよう? 
「こまったよ~」
 口から独り言が出た。
「お困りですか?」
 私は声にびっくりして声がしたほうを見る。そこにはスーツを着たメガネをかけた目がぎょろぎょろした東洋系の男の人が立っていた。
「お困りのようならこの黒犬に願い事をしてくださいお嬢さん。
 黒犬はあなたの願いを叶えましょう」
 にやりって感じで笑ってフェンスをよじ登り、スチャって感じで着地する救世主。
「ファウストさん!」
 私は救世主ファウストさんに抱きつく。
「アイーシヤさん、さっきは見捨てるようなマネをしてすいません。どうにか隙を見て救い出そうとしたのですが、何分警備が厳重で」
 頭を撫でてくれるファウストさんの胸に頭を埋めて泣きながら首を横になんべんも振る。
 ファウストさん! そんなことないです! 感謝! 感謝しかありません! 感謝! 感謝です! ありがとうございますファウストさん! 感謝! 感謝です!
「それではお友達も連れて逃げましょうか」
 ファウストさんが痙攣してるパチントンDCを抱きかかえる。
「うあわ、こいつお漏らししてるじゃん、サイテーだなコイツ」
 ポロリと本音を出したファウストさんに自分もお漏らししたことを悟られないように、
「ホントお漏らしとかってサイテーですよね!」
 とか、
「こいつ十五歳なのにさっきもお漏らししてたんですよ! ホントにクズですね!」
 とか言って、私のお漏らしにまでファウストさんの意識が来ないようにパチントンDCを罵倒し続ける。
「まぁこんな日もありますよ」
 とファウストさんはしぶしぶパチントンDCを肩で担ぎ私をおんぶして金網をよじ登る。
「ファウストさんビリビリしないんですか?」
「僕は黒犬ですよ、絶縁フィルムを皮膚に縫い付けてあります。大丈夫です」
「ひゅーカッコいいー!」
「へへ、そうですか?」
「かっこいいです! ケルベロス最高!」
「へへ、照れるな」
 なんて言いながら金網を越え近くに停めてある車に乗り込んで走り出す。第四『ランジーン』自治区から続く砂漠の中の一本道。車の後部座席にパチントンDCが寝かされて運転席にファウストさん助手席に私が座る。
「これからどこに行くんですか?」
 ファウストさんが少し難しい顔をする。
「君たちの住んでいた自治区は『ランジーン』を嫌うレイシスト集団に襲われたんですけど、まぁ今も襲われているんですけど、そのレイシスト集団が殺した 『ランジーン』の孤児や、いろいろな理由でファミリーにいられなくなった『ランジーン』の子供たちを収容している施設があります。そこを頼ろうかと思いま す」
「でも私たち『ランジーン』じゃないですよ?」
「そこが問題なんですよね。普通の養護施設では一定期間『ランジーン』と過ごした子供は受け入れてもらえないんです。『ランジーン』に感染している可能性 があるとされてしまいますからね。でも『ランジーン』専用の孤児院は君たちを受け入れてはくれない。『ランジーン』じゃないですからね。ただどちらかと言 うと、まだ『ランジーン』専用孤児院のほうが可能性があるかなって思っています。だからそこに行きます」
「何から何まですいません」
「いやいや、これは大人の問題で、君たち子どもには関係のない話なんです。『ランジーン』の子供だろうが、人間の子供だろうが子供は子供で、我々大人が保護するのは当たり前のことなんです」
 ファウストさんはハンドルから片手を放し私の頭を撫でてくれる。優しい肌触りと、少し焦げた独特の臭いが私をすごく安心させてくれる。
「ファウストさんはケルベロスなんですよね?」
「そうですよ私は黒犬です」
「ファウストさんと同じ『ランジーン』になったら私と一緒にいてくれますか?」
 思い切って聞いてみる。
 ファウストさんは少し驚いた顔をして私を見て、そして困った顔と笑顔の中間ぐらいの顔になって前を向いた。
「それは無理ですね」
 きっぱりと言った。
「あなたは黒犬にはなれません。あなたは勘違いをしている。確かに『ランジーン』は『イゲンシ』を聞き脳内変化を起こして『ランジーン』になります。だからまるで伝染病のように扱われて差別されることもあります。
 でも本質は違います。これは『ランジーン』なら誰もが感じていることだと思います。
 僕らと『イゲンシ』は引き合って一つになり『ランジーン』になるのです。
 僕らが望まなければ『イゲンシ』は僕らと融合することはないのです。
 だから『ランジーン』は選択の結果であって、襲いかかる悲劇ではないのです。
 病気ではなく、変化なのです。
 だからあなたは黒犬にはなれません、あなたが黒犬に引かれていないから。
 あなたは人間ですよアイーシヤさん、あなたは人間で『ランジーン』ではありません」
 ファウストさんがもう一度私の頭を撫でる。
「人間、素晴らしいじゃないですか」
 にっこり微笑んでくれる。
「私は子供がいませんが妻はいます。コロラドに住んでいてたまにの休暇にしか会えませんがとても妻を愛しています。
 どうでしょうナターシヤさん、私の妻と暮らしてみてはくれませんか?
 妻はいつも一人でさびしそうです、私の妻は人間です、『ランジーン』ではありません。だから私はファミリーには属していますがファミリーの中で生活せずに妻と二人で暮らしています。
 どうですアイーシヤさん私の子供になりますか?」
 なんて夢のような話だろう! 素晴らしい話! 嬉しすぎて声も出ないし涙すら出ない! 嬉しい! 大好きなファウストさんと家族になれるなんて! 嬉しい! 嬉しい!
 ここでやっと涙が出る、ぽろぽろと少しずつ出だした涙は止まることを知らず、勢いを増してまるで滝のように目から流れ落ちる。
 ファウストさんは私の頭を撫で続けてくれる。
 私は嬉しくて、ただ嬉しくて、声も出せないでただただ涙を流す。
 
 あ、パチントンDC、どうしよう?
「あーこの子も家族でいいや、ついでです」
 少し、いや本当はかなり嫌そうな顔でパチントンDC問題を解決したファウストさん、やっぱり大人、かっこいいー!
 私は泣きながら振り向くとパチントンDCは涎垂らしながら寝てる。やったよパチントンDC、私たちこんなに優しいお父さんができたよ、お母さんはまだ会ったことがないけど、きっといい人のはず、そんな予感がする、やったよ私たち! 人生バラ色だよ!
「少し眠ってください。私の家は遠いですし、あなた達の体は疲れすぎている」
 優しく頭を撫でながら話してくれるファウストさん。私は深く、深く助手席のシートに潜り込むように体を沈めて目を閉じた。すぐに眠りに落ちた。ママの袋以外で寝るのはこれが初めてだけど、全然不安とかじゃなかった。


 そして殴られて痛くて目を覚ます。
 目に入ったのは白い三角の尖がりマスクをした人たちと、
 十字架につけられてお腹を切り刻まれ内臓が垂れ下がって死んでいる死体。

ファウストさんの死体だった。


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