【5】
よく周囲を見ると道路が少し先に見える。道路から少し外れた砂漠の中のようだ。燃えているファウストさんの車がある。そして十字架につけられたファウストさんの死体、白い三角尖がりマスクをつけた人たちが六人くらい、手にはみんな斧とか剣とか持ってるし反対の手にはすごい大きな銃を持っている。
私は何が起きているのか分からなくて呆然としていたらパチントンDCが泣く声が聞こえて振り向くと私の後ろでパチントンDCが三角マスクの一人にぼこぼこに殴られていた。
私も殴られる、そして無理やりワンピースを脱がされそうになるから抵抗するとぼこぼこに殴られてびりびりにワンピースもパンツもママの靴も全部取られて裸にされた。
何するつもり?って何するもかにするもレイプされるのだろう。それくらいは私でも分かる。でもここで? ファウストさんの死体の前で? パチントンDCが見ている前で? それは嫌だ! 絶対に嫌だ! 私は立ち上がって走って逃げようとするが思いっきり背中を蹴られて転ぶ。
「やめて!!」
大きな声で叫ぶが三角マスクの男たちは次々ズボンを脱いで私に近づいてくる。
「やめて!!」
私の手足は押さえつけられて大きな体の男が私の上に伸し掛かってくる。
「パチントンDC! 私を見ないで!」
大きな声で叫ぶ、私はパチントンDCを見たらパチントンDCはパチントンDCでうつ伏せにされ、大きな男に伸し掛かられていた。
「いたいよー!」
泣き叫ぶパチントンDCの声、私は抵抗しようと暴れるが伸し掛かってきた男に殴られてなんべんも殴られて、痛い! 痛いって暴れる気力がなくなるまで殴られて、もうどうでもいいやって気持ちになる。
そして私はレイプされた。
結果から言おう、パチントンDCは本当に役立たずだって話だった。私がレイプされている間、彼もレイプされていたわけだけれども、まず彼はとりあえず叫 ぶ、痛い痛い叫びまくる、おしっこを漏らす、途中で失神する、このコンボで早々に戦線離脱し、残った男たちの相手を私が一切引き受けなくっちゃいけなく なって大変だった。
最初は痛かったが途中から感覚がマヒしてきて下半身で何かが行われてるなーくらいにしか感じなくなり、もうとりあえず早くイケよ、もうこちとら疲れてん だよ、いいからイケよって気分だった。パチントンDCは三人相手したのだろうか? 私はほとんどの男にレイプされたが彼ががんばっていたら私は半分ぐらい で済んだのではないだろうか? まったくもってあいつは使えない男だ。お尻の穴裂けたぐらいでひいひい言いやがって、私だって裂けたわ、ヒリヒリだわ。
痛いなんてもんじゃないわ。
さんざんレイプされて、まぁほとんどは私がされたのだが、私たちはその場では殺されずに車に積み込まれて変な小屋みたいなところに連れてこられてその頃 にはパチントンDCも目を覚ましてシクシク泣いていて、この小屋の中でもさんざんレイプされた。もう私は限界だったので失神する振りをしてパチントンDC に頑張ってもらおうと思ったのだが水かけられて寒くて、目を開けてガチガチしているところを殴られてさんざんまたレイプされた。しかし今回はパチントン DCががんばった、口と後ろでしっかり二人、しっかり処理してくれたので、私のほうもさっきよりも負担が少なかった、よくやったパチントンDC! お前は 男だ! そんな感じでさんざんレイプされて飽きた男たちが小屋から出て行って私とパチントンDCは二人だけになる。
「う、う、お尻の穴がいたいよう」
そんなもん私だって痛いわ、泣くな、泣いたところでどうにもなんないよ。
「う、う、お腹すいたよう」
確かにお腹は空いた、私は起き上がって小屋の中を散策するがまったく食べ物らしきものはない、小屋のドアを掴んで横に引っ張ってみるが鍵がついているらしく開かない。
「食べ物ないね」
「ないの?」
「ないよ、パチントンDCは何か食べるもの持ってないの?」
「飴がポケットに入ってたんだけどズボン脱がされてそのままだから」
私たちは二人とも全裸だ。
「それじゃ仕方ないか」
「う、う、お腹すいたよう、お尻の穴痛いよう」
「それに寒いね」
「う、う、寒いよう」
食べ物はなかったがシャツならあった、シャツをパチントンDCが着て私はTシャツを二枚重ねで着て少し寒さが減ったけど依然として寒い。
「どうするパチントンDC? このまま殺される確率は高いと思うんだけど」
「うん、僕もそう思うよ、きっとさっきの人たち自治区を襲ったレイシストの集団だと思うし、もう僕たちのこと人間とか『ランジーン』とか関係ない感じだったし」
「うん、殺されるよね、だってこんな小屋、寒いし明日の朝には凍死だよ」
「その前にもう一回くらいレイプしにくるかもしれないけどね」
「もうレイプされるの嫌だよ私、痛いし」
「うん痛いよね、僕お尻の穴すごく痛いよ」
「どうしようか? 逃げる?」
「逃げられないでしょ、逃げても周り砂漠でしょ、確実に死ぬでしょ」
「そうだよね~」
「うん、僕たち死ぬのここにきて確定したっぽいよね」
「うん確定したよね」
ごろんと寝そべる、パチントンDCもごろんと寝そべって私にくっついてくるからギューって抱きしめた。
「死ぬんだね」
私が呟くと、パチントンDCは泣きながらうんうんって頷いた。
死ぬのか、そりゃ昨日の夜からなんべんも死ぬのかって思ったけど今回は本当に無理っぽい、ここがゴール、私の死ぬ体験のゴールって気がした。でも何か釈 然としない、私の死が決まっていることだとしても何かこのまま死ぬことに釈然としない、誰かに殺されて死ぬ、やっぱりそれは嫌だなぁって思う。
「ねえ、パチントンDC? 私たち明日の朝まではきっと生きられないよね?」
「うん、それは無理だと思うよ」
「これって殺されるってことだよね?」
「そうだね、これは殺されるってことだね」
「なんか、悔しくない?」
「そりゃ悔しいよ、なんで僕が殺されなきゃいけないのって思うし、悔しいし、殺されるって最悪だよ」
「なら、殺されないようにしない?」
「何言っているの君は? この状況分かってる? 殺されるしかないじゃん」
「だから殺される前に死ぬの」
「ん? つまり自分で死ぬってこと?」
「そうそう、自殺自殺、もう死ぬことは決まってるでしょ? でも殺されるってやっぱりいや、すごく腹が立つ、だから私先に自分で死んでやろうかと思って」
「うん、それも選択肢かもね、今死ねばとりあえずもうレイプされることはないしね」
「じゃ決まりで」
「うん、僕も死ぬよ」
二人で固い握手。まずは死ぬ方法を考えなくっちゃいけないんだけど、パチントンDCが小屋の中でロープを見つけてそれを壁にフックに引っかけて首にかけ て思いっきり走って体を投げ出すと死ねるって方法を教えてくれた。それ採用ってことで二人でロープの端っこを首に巻き付けて反対側を壁のフックに引っかけ て準備万端。
ここでパチントンDCが顎に指を当て深い長考に入る。
「……このまま死んでもなんかインパクトが足りないよね?」
「そうね、またレイプしに来た奴がショック受けるようなことないかしら?」
「う~ん、体に落書きでもする?」
「体は嫌だから洋服にしようパチントンDC」
「うん、それがいいね」
それから私たちは小屋の中から炭を見つけてそれぞれの着ていた服を脱いで落書きを始める。
「こんなのどうかな? 『おまえのかあちゃんヤリマン!』」
「すごいじゃんパチントンDC、ヒュ~クールー」
「えへ、それじゃこんなのは『かあちゃんとでもヤってろ!』」
「イカすイカす! 私もこんなの書いてみました『死体とでもヤってろ!』」
「すごいよ! 死体にしか言えない最高のジョークだよ!」
「そうかな~」
って感じで私たちはノリノリで自分の着ていた服に落書きをしてもう一度着る。私はTシャツをまくり上げておっぱいを出す。
「ほれパチントンDC心残りないように最後に揉んどけ」
「それじゃあ遠慮なく」
もにゅもにゅもにゅ、少し長めに揉ませてあげて、シャツで隠してもう一度死に方をシュミレーションして最後の時を迎える。
まずパチントンDCにキスをする。抱きしめて握手をする。
「とりあえずありがとうねパチントンDC、私一人だったら死んでたかも、いや今から死ぬんだけど」
最後のジョークにもパチントンDC無反応、お前ね、そういうところがダメだからモテないんだぞ。
「最後にいいかな?」
「なに?」
「最後のお願いしていいかな?」
「うんいいよ、聞かせて」
モジモジし出すパチントンDC、早くこのテンションのまま死にたいから早くしろ。
「僕、童貞のまま死にたくないんだ!」
はい終了、それじゃカウントダウンお願いします、5、4、
「まって! 無視しないで! 僕だって男だよ! そりゃ童貞のまま死にたくないのは道理だよ!」
「いやいやいや、死ねパチントンDC、私お股痛くて痛くてたまらないの、これ以上は本当に勘弁、嫌だよ! 私これ以上セックスするのは絶対にいや!」
「う、本当に駄目?」
「駄目駄目駄目! 本当にこれは嫌! 本当に死んでも嫌だし死ぬ寸前でからって絶対に嫌!
絶対!
絶対!
絶対嫌!」
「う、分かったよ、そんなに怒らないでよ」
「それじゃもういいね! 死ぬけどいいね!」
「うん、いいよ、死のう」
「お祈りのことばとかチャンチャラおかしいからしないけどいいね!」
「いいよ、全然神様とか信じられなくなってるから、いいよ」
「それじゃパチントンDC! カウントダウンして!」
私はパチントンDCの手を強く握る、パチントンDCの手は私の手を強く握り返してくれる。
「行くよ! 5!」
「5!」
「4!」
「4!」
「3!」
「3!」
「2!」
「2!」
「1!」
「1!」
「「GO!」」
手を繋いで走り出す、私はこの時得もいわれぬ爽快感を感じた、走っている最中に映る景色はすべて私の後ろに流れていき、止まらないその映像は私の頬に風 を送り、耳に風切音を送り、体に重力を送り、私の心に自由を送った。確かめるように瞼は閉じず、閉じられず、脳天を突き刺す電流のような生命を感じた。
そう私は死に向かい走り出した瞬間から生命を、生きている実感を感じた、死を手にするための疾走は私に生きている実感をくれた。そして私は体を投げ出 す、一瞬無重力なって首に強い力を感じてボキボキボキって首の骨の骨折音が聞こえて私の体は地面に叩きつけられる。意識はある、ただ消失していっている。 痛みはない、消失していっている。私は死を迎えるにあたりとても満足感を感じていた。
死ぬのって簡単。簡単なことなんだって思った。
ママのことを考えた、ママが死んでも私は悲しく感じなかったのはなぜかって思っていたけどそれの答えが出た気がした。
運命なんだって。
死んだことに何も感じないのと、大好きだったってことは別だって。
初めてだから混乱しただけなんだって。
死は運命だから悲しみの中にあるものじゃないんだって。
私はママを大好きでよかったんだって。
大好きな人がママだけしかいなかった私は、ママの死に直面して感情の平坦さに戸惑ったけど、大好きだったファウストさんが死んだときも悲しいとか思わなかったから大好きな人の死は大好きとは関係なく悲しいって思わないものなんだって分かってよかった。
死は運命だから悲しみの対象じゃないって分かってよかった。
ママ大好きだったんだ。私ママのこと大好きだったんだ。悲しくはないけど好きだった気持ちは嘘じゃないし、大好きだったことが思い出せて死ねてよかったって思う。
出会いと起こる事柄が、初めから決まっているボードゲームのようなものが運命であるとしたら、私がママに出会って、お腹の中で過ごして、ママが死んで、 靴をくれて、ファウストさんが現れて、大好きになってそしてファウストさんが死んで私も今死ぬ、これが運命なのだとしたら、死ぬことは悲しみじゃないって 思った。最初から決まっているのなら悲しくなくてもいいんだって、大好きでいいんだって思ったし思えた。
大好き私って思った。
うん満足です。今日死ぬことが決まっていることだとしたら満足して死ぬにこしたことはない、そうしなくちゃ損だ、どうせ死ぬのだから、運命なのだから、うん、満足です。
なんて思いながら少し微笑んでみてみたりする、最後だからいいよね? いいよね? 少し可愛い感じでいいよねって思う。悦に入って死を待ちながらニヤニヤしているとき消失寸前の聴覚に驚きの音を聞いた。
「やっぱり童貞のままじゃ死ねないよ~え~ん」
なんて根性なしの声だろう、男の子は大変だ、しかしもう私には関係ないことだからほっておこう。そこで気がつく、消失寸前の視界にとんでもない文字が映る。
私のTシャツに描かれた文字。
『死体とでもヤッてろ!』
「え~ん童貞のままじゃ死ねないよ~う」
いやいや、パチントンDC、この文字はそういうつもりじゃないからね。
最後まで運命はままならないものだ。
END
--------------------------------------------------------------
ランジーン×コード tale.4 パラダイス・ロスト 1st
著者:大泉 貴
販売元:宝島社
(2012-01-13)
ランジーン×コード
著者:大泉 貴
販売元:宝島社
(2010-09-10)
販売元:Amazon.co.jp
ランジーン×コード tale.2
著者:大泉 貴
販売元:宝島社
(2011-01-08)
販売元:Amazon.co.jp
ランジーン×コード tale.3
著者:大泉 貴
販売元:宝島社
(2011-05-09)
販売元:Amazon.co.jp
ランジーン×コード tale.3.5
著者:大泉 貴
販売元:宝島社
(2011-08-05)
販売元:Amazon.co.jp
--------------------------------------------------------------
http://kl.konorano.jp/(このラノ文庫公式)
http://konorano.jp/(このラノ大賞公式)
https://twitter.com/konorano_jp(このラノツイッター)