「いつかこの手で命を救う料理を創り出してみせる!」
「なにか食べると気持ち悪くなっちゃうの……」病気の少女クレアを助けるため、マンドラゴラを求めて旅立つレミオ。シェフ見習いの彼は、食で病気を治療する医学“食療学”を極める夢を抱いていた。しかし、旅先でアイソティアの美少女アトラと、聖獣殺しバレロンの争いに巻き込まれ、封印していった過去を解き放たざるを得なくなり……「風環、形成―― 【ヴェルキア器官、起動!】」。
「なにか食べると気持ち悪くなっちゃうの……」病気の少女クレアを助けるため、マンドラゴラを求めて旅立つレミオ。シェフ見習いの彼は、食で病気を治療する医学“食療学”を極める夢を抱いていた。しかし、旅先でアイソティアの美少女アトラと、聖獣殺しバレロンの争いに巻き込まれ、封印していった過去を解き放たざるを得なくなり……「風環、形成―― 【ヴェルキア器官、起動!】」。
<編集長の隠し玉!>として、
話題のニュータイトル『ドラゴンチーズ・グラタン』の、
キャラクター紹介&エピソード0を、三週連続で公開!
レミオ、アトラ、バレロン、それぞれの
これは現在へ致る物語――――
『ドラゴンチーズ・グラタン 竜のレシピと風環の王』
著:英アタル/イラスト:児玉 酉
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『ドラゴンチーズ・グラタン エピソード0<Il capitolo di Atra> 』
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■アトラ・ヴェルデ■
透き通るような白い肌、黄緑の瞳、赤い唇、
朝露に濡れた若葉のように美しい緑色の髪を持つ、
アイソティアの美少女(脳筋系)。
自称・善良アイソティア代表で、
現在、世界面取り計画実施中!!
※掲載イラストはキャラデザのため
完成イラストとは設定等の変更がある場合があります。
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故郷の森は、燃えて崩れた。
――なにもかも、炎が飲み込んだ。
著者:英 アタル
販売元:宝島社
(2013-02-09)
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http://konorano.jp/bunko(このラノ文庫公式)
http://konorano.jp/(このラノ大賞公式)
https://twitter.com/konorano_jp(このラノツイッター)
『ドラゴンチーズ・グラタン エピソード0<Il capitolo di Atra> 』
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■アトラ・ヴェルデ■
透き通るような白い肌、黄緑の瞳、赤い唇、
朝露に濡れた若葉のように美しい緑色の髪を持つ、
アイソティアの美少女(脳筋系)。
自称・善良アイソティア代表で、
現在、世界面取り計画実施中!!
※掲載イラストはキャラデザのため
完成イラストとは設定等の変更がある場合があります。
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故郷の森は、燃えて崩れた。
――なにもかも、炎が飲み込んだ。
――家も、果樹園も、みんなの笑顔も歌声も。
――姉さんの命も。
――アタシのなにもかもは、炎の中で灰になった。
――燃え痕にはただ一つ、姉さんの願いが残っていた。
アタシはあんまり人間が好きじゃなかった。
だって耳がとがってるからって、人間が聞き逃している動物の声が聞けるからって、少しくらい力が強いからって……本当につまんない理由でアタシたちを――アイソティアを悪者だって決めつける。
「お前らは嫌いだ~」って言ってるヤツらを無理して、好いてやる理由って、ある?
でもアタシが人間を悪く言うと、姉さんは決まって「人間を恨んではダメよ」と悲しそうにアタシをたしなめた。
姉さんはずっと人間とアイソティアのトゲトゲしい関係を変えたがっていた――『ふれてもトゲで傷つかない、丸くて優しい世界』を目指し続けていた。
あの日、アタシと姉さんは荒らされた村の果樹園へ来ていた。
犯人は人間だった。小鳥たちが、そう教えてくれた。
アタシたちは肉を食べない。食事といったら、主にパン、魚。それから果物が大好きで、小さいけど果樹園も作っていた。
幼かったアタシも苗を植えて、果物を育てた。実が熟すのをとても楽しみにしていた。それを根こそぎ持っていかれて、アタシはすごく悲しかった。
だから、あの日も言ったの。「人間なんか大嫌いだ」って。
でも、姉さんはやっぱり「人間を恨んではダメ」って言った。
いつもなら、姉さんの言うことだからとアタシは渋々うなずいたと思う。
けれど、このときは自分の育てたものを理不尽に奪われた怒りから食い下がった。
犯人を見つけてこらしめてやろうと言った。
動物たちの声をたどれば、簡単に捕まえられるわけだし。
すると姉さんに、前から優しく抱きしめられた。
『辛い気持ちや悲しい気持ちは火なの。だからそれを誰かにぶつけてはダメ。誰かにぶつけた火は、ちょっとずつ大きくなって、いつか炎になってしまう。一度、大きくなった炎を消すのはとっても大変なの』
そして穏やかだけど、いつもより厳しい声で告げた。
『もしもアイソティアが人間に火を投げてしまったら、お互いの仲はもっととげとげしてしまう。いつまでもまるくて優しい世界にならないわ。だから、とても損をした気分になるけど、辛い気持ちは私たちの胸に留めるの』
大好きな姉さんに我慢しろと言われて、ぶつける先がなくなってしまったアタシの怒りは、涙になってあふれてた。
『もしもアトラの胸ではあまってしまうほど辛い気持ちが大きいなら、姉さんにわけて。ぅうん、小さくてもいい、姉さんにいくらでもわけていいのよ』
人間たちを許す気にはなれなくって、涙は止まらなかった。でも、どんなときだって姉さんがついていてくれるんだって思えて……うれしかった。
だけどその夜、アタシたちの森は炎に包まれた。人間に襲撃されて――
目が覚めると、アタシは木の枝からぶら下がっていた。自分の鋼線に絡まって。
きっと、傍目には糸の絡まった操り人形みたいな格好だろう。
野宿するときは、いつも木の枝にワイヤーで身体を固定して寝ているんだけど、朝まともな格好で目覚めたことはない、一回も。
アタシは複雑によじれた鋼線の隙間を、蛇みたいにすり抜けて地上へ降りる。
大あくびしながら、空を見上げた。
金色の朝日がにじんで見えるのは、あくびで涙が多めに出ただけだし。
…………故郷が燃えたあの日、アタシは復讐と、姉さんの願い、どちらを取るか悩んで、苦しんだ。そして『丸い世界』を目指すことにした。
そうすれば、心の中で姉さんがいつまでも笑ってくれる気がしたから。
まぁ……上手くいかないし、どうしたらいいかも、いまだに手探りだけどね。
そんなことを考えていたアタシの耳に、力強く空気をかき混ぜる音が聞こえてきた。たぶんアイソティアの聴力じゃないと聞こえなかったであろう、遠い音。
アタシはその音源を空に探し……見つけた。
赤い粒子の尾を引いて、力強く羽ばたく巨大な姿――竜だ。
大きくて怖そうな外見とは裏腹に、温厚で賢いあの子たち。その姿を見られて、アタシは少しうれしくなった。それも束の間、不安になったアタシは急いで荷物をまとめだす。
ここは人里が近い。もしも竜がこの近辺に降り立つと絶対、大騒ぎになる。
人間のためにも、竜のためにも、この騒動は未然に防がなくちゃ。それに事態を丸く収められれば人間たちも、アイソティアのことを見直してくれるかも知れない。
アタシは竜を追って、森を駆け出した。
途中、藪を越えた先に大きくて澄み切った湖が見えた。
一口、水を飲んでいこうと思ったアタシは、鏡のような湖面へ顔を寄せる。
引きつった笑顔が映った。
アタシによく似ている。
でもその表情は、気持ち悪い笑顔。
これから起こるかもしれない危険が楽しみだ、と言わんばかり。
思わず振り向いてみたけど、もちろん誰もいない。
アタシは、自分の口元へ指を伸ばし…………頭を何度も左右へ振った。
…………見間違え、見間違え!
さぁ~てと、今日も元気に行きますか!
善良アイソティアの代表、このアタシ、アトラ・ヴェルデちゃん、世界を丸くするためにいざ出撃よ!
『ドラゴンチーズ・グラタン エピソード0<Il capitolo di Atra> 』 Fine
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『エピソード0<Il capitolo di Valeron> 』 へ、続く。
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著者:英 アタル
販売元:宝島社
(2013-02-09)
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