■前篇~ハッキングって、何?~
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ヴァル:え? 何? ハッキングについて説明しろって? 攻奪式魔術情報操作術が正式名称だが一般的には「外法術」と呼称される情報魔術系統の一分野のことかな、それとも、それを用いてグラムライン経由で魔術領域(サーバー)や魔術器具(グラムドライバー)に侵入し情報の奪取や改竄及び操作・支配する行為としての「魔術侵入」のことかな?
エーレフォーア:ぜんぶ。
ヴァル:遠回しに拒否してんだよ! 気づけよ!
エーレフォーア:ほらぁ、はやくはやくー。はやくかつそれでいてわかりやすくー。
ヴァル:無邪気に要求のハードルを上げてくんな!!
ヴァル:まあ、簡単に言えば、「魔術的な領域に侵入する魔術」だね。
エーレフォーア:「魔術的な領域」?
ヴァル:ああ。この都市には、そういうのが結構ある。まず、大前提として、グラムラインの存在を説明しておこう。
エーレフォーア:都市全域に張り巡らされた、見えない魔力の網のことですわね。
ヴァル:こ の都市は、魔術装置《疑似世界樹(ユグドラシミュラ)》の力によって、島ごと空に浮かんでいるわけだけど、《疑似世界樹》はそれだけじゃなく、余剰魔力を グラムラインとして発信している。僕たちが日常的に使っている魔術器具(グラムドライバー)なんかは、たいていがグラムラインにアクセスして、魔力の供給 を受けているね。
エーレフォーア:保冷庫(フリッジ)とか、淡灯(ライト)とか、あのへんの魔具(ドライバー)がないと、都市では暮らしていけませんものね。もうみんな山に棲んだらよろしいのに。
ヴァル:みんながみんな、君みたいな野性児じゃないんでね……。で、まあ、そういう魔術器具なんかが、いちばんわかりやすい「魔術的な領域」だね。ハッキング――情報魔術の一種である「外法術」を使うと、ここに「侵入」できる。でもって、勝手に使えるようになるわけだ。
エーレフォーア:ということは、他人の家の保冷庫を開けたり閉めたり開けたり閉めたり……!
ヴァル:そんなくだらんことするか。他人の家の警備用魔人形(ゴーレム)を無力化したり、淡灯(ライト)を勝手に消して混乱させたり、対侵入者用の魔術罠(トラップ)を解除したりすれば、簡単に盗みに入れるだろ。
エーレフォーア:犯罪じゃないですの。
ヴァル:犯罪なんだよ。そういうことできちゃうから、っていうか、用途がほとんど侵入系だから、外法術による魔術侵入(ハッキング)は犯罪であり、外法術師(ハッカー)は犯罪者なんだよ。
エーレフォーア:なるほどー。そっか、そういえば、ヴァルも犯罪者なんですのね。
ヴァル:外法術師(ハッカー)としての僕に依頼を持ちこんできた君もな。
エーレフォーア:……。人はなぜ、罪を背負わねば、生きていけないのでしょう……。
ヴァル:そ んな重い話はしてないっつーの。さて、魔術器具以外にも、「魔術的な領域」ってものはある。最近は〝企業〟の登場によって、グラムラインの一部を束ねた企 業用の魔術領域(サーバー)が増えてきてるからね。そこには、その企業が開発した魔術式(アプリケイション)を初めとして、いろんな情報が刻まれてる。魔 術領域に侵入して、そうした情報を盗めば、いい金になるんだ。下手な強盗より稼げるくらいにね。
エーレフォーア:それで、最近、外法術師(ハッカー)が増えてるんですのねー……
ヴァル:そういうこと。まあ、とはいえ、誰でも外法術(ハッキング)を使えるってわけじゃないし、外法術師(ハッカー)ならどこにでも侵入できるってわけでもない。そのあたりは、後篇で説明していこうか。
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クラッキング・ウィザード
鋭奪ノ魔人と魔剣の少女 (このライトノベルがすごい! 文庫)
著者:紫藤 ケイ
出版:宝島社
(2013-08-10)
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