人気の「モテ泣き」シリーズ、

6巻、8月10日発売です!

いよいよクライマックス!!!!
!!!!

(いろんな意味で)
6巻表紙CMYK



























                              著:谷 春慶/イラスト:奈月ここ



地獄の蓋フルオープン! 死者の霊が溢れだし、街はパニック状態に!! 
だがゲス男・望月砕月はそんな中でもビョーキ全開! 
迫り来る死者、ハルマラ率いるウィザード軍団、
そして事件の黒幕・オピウムと激しい攻防を繰り広げながら、
修羅場を発生しながら、砕月は事件の真相に迫る! 
が、明らかになっていく真実は、ベリーハードなものだった……。
けど、ゲス男・望月砕月はそんな中でもビョーキ全開なんですけどね!!


8月10日の6巻、9月の7巻の連続刊行に先駆け、
「モテ泣き」シリーズについて、一挙解説!

まずは、前巻
『モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣)5』では、
いったいどんな事になっちゃってたのか、一部紹介します!


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「兄ぃ、お見事です」ハピ子
 横に立つハピ子の頭をぽんぽんと撫でた。
「ハピ子、ありがとう。体は大丈夫?」
「ぜんぜん平気です。兄ぃのためにゃらウチはたとえ火のにゃか水のにゃかです」
 ピコピコ猫耳が動いていた。ああ、もう抱きしめたいな、この子。
 けれども、僕が暴走するより先に足音が近づいてきた。
 ホミカ及びミドルウィザードの面々だ。彼女たちはそれぞれ武器を携え、警戒を解いていない。その後ろからハルマラが現れる。
「攻撃目標だったバグの排除を確認しました。状況は終了ですわ」
「しかし、ハルマラ様……」
 ここまで来てもホミカの敵意は消えないようだ。僕は苦笑を浮かべてホミカにウィンク。ホミカは舌打ちを鳴らし……
「……了解しました。各自武装を解け。こいつらはボクらの敵ではない」
 ホミカの言葉にミドルウィザードたちは武装を解く。
「作戦を第二フェイズへ移行しますわ。ホミカ、部隊を連れてアルルーナ様との合流ポイントへと向かいなさい」
「……了解しました。行くぞ」
 ミドルウィザードたちは軽やかに空へと飛び立っていく。見上げたらホミカのパンツが見えそうで見えない。いや、そんなことじゃねぇ。
「ホミカ、ありがとう」
 勢いよくこちらを振りかえり、ホミカは忌々しげに僕をにらむ。僕のとなりでハピ子が威嚇していた。
「ボクがいつかお前らまとめて削除してやるからな!」
 それだけ言ってホミカは飛び去っていった。
 ハルマラはため息をつきつつ「もうしわけありません」とだけ言う。
「まあ、いいさ。それよりハルマラもお疲れ様。ありがとう、助けてくれて」
「当然のことですわ、砕月様」
 寝転がっていたタマがカンナちゃんごと起き上がる。
「……砕月様?」
 やっぱり反応するよね? 僕だってする。ハルマラは悠然とタマの前に立ち、微笑みかけた。
「あなたを認めましょう、ロウアー……いえ、ウバタマ」ハルマラ
「今、ゲツ君のこと砕月様って言わなかった?」
「ええ、敬愛する殿方に尊称をつけるのは当然のことではなくて?」
 くすりとハルマラは笑う。
「ウィザードとしても女としても負けるつもりはなくてよ」
「なに、いきなりわけのわからないこと言ってるのかな?」
「わたくしは砕月様をお慕いしております」
 ハピ子が「さすがは兄ぃです」と感激したような顔で僕を見ている。その反応の意味がわからない。
「ウバタマ、あなたには負けませんわ」
「勝手に喧嘩売られても困るんだけどな。奴隷の所有権争いなら買うけど?」
 道具から奴隷にランクアップ……って言っていいのかな? 判断に困る。
「気づいていないのならかまいませんわ。こちらとしても、それならそれで好都合ですもの。あとで後悔なさらぬように」
 くるりと踵を返し僕へと視線を向けてくる。
「それと砕月様……」
「あの、その呼び方は……ちょっと慣れないというか」
「わたくし、こう見えても多忙ですの。ですから今のところ会うのは十日に一回ほどのペースでかまいませんわ」
 さり気なく僕の抗議は受け流される。
「ですが、今後は時間を作っていけるようにしますわ。その間に身辺整理はつけておいてください。それまでは多少の浮気は黙認しましょう。あなたのそばにいられないわたくしにも非がありますものね」
 艶然とほほ笑みながら詰め寄られた。
 そこはかとなく静流先輩と同じ雰囲気がするんですけど、僕は大丈夫だろうか? あのね、重すぎる愛を支えきれるほど僕は強い男じゃないよ?
 チュッと頬に唇が添えられる。
「では、砕月様、また後ほど」
 そう言って歩み去っていくハルマラは景色に溶け込むように消えていった。僕はハルマラにキスされた頬っぺたに手を添える。ピンクのルージュが残っていた。呆気にとられたのも束の間で、重い沈黙がみんなを支配してるんですけど、僕、なにか悪いことした?
「さすがは兄ぃです!」
 いきなり叫ぶハピ子ちゃん。君のハイテンションぶりがよくわかりません。
「敵だったメスさえメロメロ。兄ぃは強いオスですにゃああ。にゃああああああ!」
 猫の遠吠えとか、初めて見たよ。
 しかしですね……問題は僕を白眼視で見る女の子です。
「タマ、まあ、これでみんなうまくやってけるんじゃないかな?」
「そうだね、砕月様☆」
 笑顔だけど、プレッシャーを感じてしまう。
「いや、その……なんか、怒ってる?」
「別に怒ってないし。砕月様は自意識過剰なんじゃないの? ていうか、タマさん的には問題なし、むしろ奨励かな。だって、当初の予定どおりハルマラ口説き落とせたんだしさ」
 そう言って立ち上がる。カンナちゃんも立ち上がり、僕とタマの顔を何度も往復するように見た。そして、ポンと手を叩き、えいっと僕の脛を蹴ってくる。
「え? なんで? カンナちゃん、なんで?」
 そのキックの意味がわからない。
「砕月様はこれからハルマラの相手で大変だと思うけど、がんばったら? タマさんには関係ないことだもんね。行くよ、カンナ」
「はいは~い☆ タマさんタマさん、手、つないでいいですか?」
「ほんっと、うっとうしいよね」
 悪態つきつつもタマはカンナちゃんの手をつなぐ。カンナちゃんは嬉しそうに手をブラブラとゆするように歩きだす。
「えへへ……タマさん、えへへへ。タマさ~ん」
 嬉しそうに笑いながらカンナちゃんはチラリと僕のほうを見る。タマに見えないようにあっかんべぇ、と舌を出してきた。
 よくわかんないけどカンナちゃんには敵だと認識されたらしい。
僕、がんばったのに……
「にゃおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!」
 唯一味方のハピ子は、猫のくせに遠吠えするだけだった。


◆Epilogue【夏草や つわものどもが ゲスの跡】◆
 
 僕らのいた二の丸や、さらに上にある本丸までの道は舗装されておらず、木々の間を縫いながら小道へと出なければならない。そこから神社まで下り、やっと帰れるというわけだ。なので、僕ら四人は獣道を歩いている。
 前を歩くタマに僕が声をかけようとすると、カンナちゃんがタマに話しかけて僕の発言をつぶしてくる。カンナちゃんの瞳には僕への対抗意識が灯っており、言外に「タマさんは渡さん」と言っていた。もうしかたがないからカンナちゃんに話しかけよう。
「あのさ、カンナちゃん、オピウムってなにしようとしてるか訊いてる?」
「詳しくは聞いてないよ」
 無視されなくてよかった。
「夢のなかにいたようにおぼろげにしか覚えてないんだけど、オピウム様は反魂香を使ってなにかを生き返らせようとしてるみたい。でもでも、反魂香だけじゃあうまくいかないって知って、別の方法をやるしかないって言ってた。それで、新條市に反魂香をバラ撒けって言ってきたんだ」
 その辺は鬼子ちゃんも言ってたことだ。問題は目的だ。
「バラ撒いてどうするつもりなの?」
「なんか生と死の境目を曖昧にするとかなんとか言ってたけど、それでどうするかまでは……あっ!」
「どうしたの?」
「この山を中心にしてなにかとつなげるとか言ってた! 山は異界の入口だとか……」
 獣道を抜け、小道へと出た。舗装されていない道はそのまま本丸のほうにもつながっている。
「誰っ!」
 タマが道のほうへと視線を向ける。その手には大鎌が握られていた。タマの見てるほうを僕も見る。誰もいないと思っていたけど、虚空から滲み出るように人が姿を現した。
 アルルーナさんを背負ったボロボロの義父さんだった。
「ああ、ゲッちゃんたちか……そっか、うまいこと救ってみせたんだね。やるなぁ、ゲッちゃん。それでこそ、僕の息子だ」
「どうしたのさ、その怪我!」
 駆け寄ってみれば、アルルーナさんも血だらけだった。
「アルルーナさん、大丈夫なの?」
 義父さんは苦笑を浮かべる。
「復旧作業をしてるだけだ。命に別状はない。それよりハルマラちゃんたちは?」
 タマが大鎌を消した。
「ハルマラたちなら合流ポイントに向かうとか言ってたよ」
「なるほど……いや、結果としてはそっちのほうがいいか」
 この人にしては珍しく真剣な顔をしていた。普段はヘラヘラ笑ってちゃらんぽらんとしてるけど、こうやって黙ってると凄みのようなものさえ感じてしまう。僕の視線に気づいたのか、義父さんはヘラリと笑う。
「いやいや、オッピー強くてさぁ。悪だくみをとめようとがんばったけど、逃げ帰ることしかできなかったよ。ありゃ、チートだな」
 口元はゆるいけど、目は笑ってなかった。
「ゲッちゃん、少し厄介なことになりそうだ。君に大切な人がいるなら、すぐにその人のもとに行きなさい」
「どうしたんだよ、いきなり」
「香織と莉子は僕が守るから気にしなくていい。ここでポイントを稼ぎ、冷えきった家族関係を再構築してみせる! そう、僕はピンチをチャンスに変える男、望月大和!」
「発言内容がゲツ君とかぶりまくるね、この人」
「それはものすごく心外だよ、タマ」
「ゲッちゃん、マジな目で言わないでよ。お父さん、地味に傷つくぞ☆」
 辺りが不意に暗くなった。空を見上げれば暗雲が立ち込めている。
「なに、これ?」
「あーあ、はじまっちゃったねぇ」
 小道の上、本丸のほうから人影が歩いてくる。一人じゃない。わらわらと押し寄せる波のように。あれは……
「幽霊?」
 新條市にあふれかえっている死者たちだ。でも、おかしい。あれは完全に実体化している。
「え? ディレクトリ? まさか、カンナちゃん?」
 カンナちゃんは必死になって首を横に振る。けれども、その顔は幼いながらも戦士のように引き締まっており、いつのまにか大槌を具現化していた。
「これ、ディレクトリじゃないよ」
 タマは沈痛な面持ちだ。その手には大鎌が握られている。
「じゃあ、現実世界だって言うの!? だって、あんな化け物が……」
 わらわらと死者たちが近づいてくる。タマが大きく深呼吸をして、真剣な顔で僕を見すえた。
「神蝕だよ。現実を塗りかえる狂った幻想。世界の破壊……大規模神蝕」
「……どういうこと?」
 義父さんが肩をすくめる。
「オッピーが黄泉路を開いたんだ」
 黄泉路? それってあの世への道ってこと?
「西行法師の反魂香で生と死の境界を曖昧にし、この山を異界の入り口に見立てた。ほんと、健気に暴走してくれちゃって、まあ、困ったちゃんだよ」
「それって、どうなるの?」
「どうなるもなにも神蝕ってのは望みどおり世界を描きかえることだ。描きかえられた世界は、それまでの秩序を維持できず、場合によっては崩壊する」
 言ってる意味がよくわからない。
「今のところ範囲はこの山の本丸だけ。でも、すぐに広がってくんじゃないかなぁ?」
 その言葉と呼応するように、うめき声のようなものが森のなかから響いてくる。
「これは思ってたより早いな。さっさと降りたほうがいい。ここもすぐに呑み込まれる」
 そう言って義父さんは歩きだした。
「どこ行くんだよ?」
「家族のもとだよ。さっきも言ったろ? 大切な人のもとに行けってさ」
「だって、このままじゃあ」
「対抗するにも駒も策もない。今は撤退したほうがいい。それに、これからが大変だ。黄泉醜女っていう死人さんたちが生きてる人を襲う。ゲッちゃんだって街中に幽霊みたいなのがいっぱいいるの知ってるだろ? アレが実体化してゾンビパニックだよ」
 ボコリと音がする。足首をなにかにつかまれた。青白い手が僕の腕をつかんでいる。その手を義父さんの靴が踏み砕いた。
「僕はもうゲッちゃんを一人の男だと思ってる。だから束縛はしない。でも、一緒に来るなら家族として僕が守る。そうじゃないなら、あとは自分の判断で行動しなさい」
 僕は山頂を見上げた。
 死者の群れはまるで洪水のように折り重なって迫ってきている。
 呆然と立ちすくむことしか僕にはできなかった。

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(世界崩壊の危機です! 立ちすくんでる場合じゃないぞ! 砕月!)

8月の新刊、『モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣)6』
予約受付中です!

著者:谷 春慶
出版:宝島社
(2013-08-10)




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