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スクールライブ・オンライン Episode智早【4】


 私と篁(たかむら)は、地元の中学には通わないことにした。お互い、一から出直すという意味でも知り合いのいない地で生活をスタートしようと思ったからだ。
「皆さん入学式お疲れ様でした。もうこの学園のシステムはご存じかと思いますが――」
 入学式の後、割り振られた教室に移動し、担任教師からガイダンスを受けている。篁とは違うクラスになった。
 新天地となるのは、中高一貫の学校――私立栄臨学園。全寮制だが、栄臨学園の名を知らない者はいないので、両親の説得はそれほど難しくなかった。
 それなりにレベルの高い入試ではあったが、私と篁の学力なら余裕だった。否、余裕どころか、篁は成績トップ合格者として新入生代表の挨拶までこなしてしまった。
 謙遜した篁は、「たまたま入試に関係ある科目が得意だっただけで、智早(ちはや)は図工とか家庭科とか得意じゃない? 体育も女子の中じゃ一番だし。だからその、ね?」と、こちらは別になんとも思っていなかったのに、私が悔しがっていると思って必死にフォローしてきたのが逆に癇に障った。
「春休み中からIDとパスワードは配布されているので、既にプレイし始めている人もいるかと思いますが、まだの人は明日までに、希望する選択授業と職業(クラス)を登録しておいてください。くれぐれも、自分との相性を考えて選んでくださいね。選び直しは認められませんので」
 栄臨学園は単純に進学校としても有名だが、それよりも特筆すべきシステムが存在する。
 【Real Reflects Record】――通称【3R】という、学内専用多人数同時参加型ロールプレイングゲームが、なんと教育の一貫として推奨され、授業にまで組み込まれているのだ。公式にも“人を育てるゲーム”としてキャッチコピーが掲げられている。
 私と篁はまだ未プレイだが、入学に合わせた今日から始めるつもりでいる。
 勉学だけじゃなく、ゲームの成績も同じように――いや、それ以上に評価される学校。こんな変わった学校に入学しようという生徒たちだ。変わり者も多いだろう。私のような性格の人間が、今さら一般的な女子の会話に混ざろうとしても至難の業だろうし、篁も友達と楽しくゲームでキャッキャウフフすることに憧れていたので、この学園のシステムは都合がいい。
 そういうわけで、私たちはこの栄臨学園を舞台に新しい生活を始めることにした。
 私の場合、少し視野を広めてみたいと考えている。傍から他人を観察するのも悪くはなかったが、やはり実際に触れ合ってみないことには物事の真価なんてわからない。篁とのことがいい例だ。
 さしあたって、私はこのクラス内で友人を作ろうと思う。
 以前、篁に「私にはどうして女子の友達ができないのだろう」と相談を持ちかけたことがある。私は篁と違っていじめられていたわけではないのに、友達と呼べる人間が一人もいなかった。一人でいることを好み、こちらから絡みにいかなかったのも原因ではあるが、話しかけられれば応対するし、日直や掃除当番もそつなくこなしていた。それなのにクラスメイト、特に女子は私を避けていた。もしや私の体が異臭でも放っているのかと、自分の肉体的欠陥を疑ってしまったほどだ。
 しかし、それについて篁は頬を赤く染めながら、こう見解を示した。
「智早が他の女子より……可愛いからじゃ……ないかな。近くにいると、どうしても比べちゃうから、それが嫌だったのかも」
 だそうだ。どうやら私は可愛い部類に属するらしい。
 そこで狙いをつけたのが、私以上に可愛いと思しき女子だ。運がいいことに、右隣の席に座る女子がそれに該当すると思われる。何故なら、女の私ですら見惚れるほどに可憐。可愛いというか、この歳で既に美人と呼ぶに相応しい器量を備えている。ピンと伸びた背筋に黒髪ストレートロング。竹取物語のかぐや姫が現実に現れたみたいな印象を私は受けた。それになんと言っても、胸が大きい。無意識に、私は自分の胸に手を添えて比べてしまっていた。最近、成長期に入ったと自負していたが、それは井の中の蛙だったようだ。 篁の言っていたとおり、女子とは、常に他者と己を比較してしまう生き物なんだな。
 つい癖で人間観察をしていると、相手がこちらの視線に気がついた。
「初めまして。わたくし、穂村杏奈(ほむら・あんな)と申します」
 相手は訝しむ様子もなく、ニコリと穏やかに微笑み返してきた。
 おぉ、笑うとさらに。持って帰りたい。
「君は美人だな。大人びていて、とても同じ学年とは思えない」
 思わず率直な感想をこぼしてしまった。
「わ、わたくしが美人だなんて、そんなことありません」
 照れた顔もまた美しい。さらって帰りたい。
「それをおっしゃるなら、アナタの方がずっとお可愛らしいですわ。知的でミステリアスな雰囲気の中にも、たおやかさと愛らしさがあると申しましょうか。まるで、物語に登場する文学少女が本の中から出てきたようですわ」
 賛辞に対する返礼だろうが、嫌味に聞こえないのは彼女の人柄の為せる業だろう。
「ありがとう。私は瀧(たき)智早だ」
「こちらこそよろしくお願いいたします。この学園には知り合いが誰もおらず、少し不安でしたの。同じクラス、隣の席のよしみで仲良くしてくださいまし」
 外見どおりと言えばそうだが、一人称が「わたくし」で、語尾に「~まし」などとつける人間が現代日本にもいるんだな。実に興味深い。
「君は変な喋り方をするね。あと、胸がすごく大きい」
 またしても口を衝いて出たざっくばらんな意見に、彼女の笑顔がピシリと固まった。
「そ、そうですか? 多少、一般的ではないとは思いますが、そのように面と向かって変だと言われたのは初めてです。胸についても、そんなきっぱりと……」
「挨拶は、やはり『ごきげんよう』なのかい?」
「……ええ、まあ。……ですが、郷に入っては郷に従う心構えくらいは」
「いやいや、君はそのままでいい。そのままの方が面白いから、ぜひ『ごきげんよう』でとおしてほしい」
「お、面白い? そういうアナタの方こそ口調が女子らしくないのではありませんこと? 変わっているというなら、アナタも変わっていらっしゃると思いますが」
「よく言われる。しかしどちらかと言えば君の方が変わっているだろう。胸も大きいし」
「そんなことありませんわ! わたくしの実家では皆こういう喋り方ですのよ! それと胸は関係ありません!」
「はっはっは、愉快なご家族だね。ちなみに胸の大きさは遺伝かい?」
「何故口調一つでそこまで笑われなくてはなりませんの!?」
「変わっているというのは悪いことじゃない。普通と違うということは、特別という意味でもあるからだ」
 それを私は篁から教わった。
 あの時の気持ち、胸の温かくなる感覚を、目の前の彼女にも伝えたい。
「つまり、わたくしは特別変だとおっしゃりたいんですの!?」
 おかしいな。期待していた反応と違うぞ。
 察するに、この台詞を使うのは時期尚早すぎたということだろう。初めて自分から友達を作ろうなどと思ったものだから、少々気が急いてしまったようだ。まあいい。少しずつ積み重ねていこう。
「ところで杏奈」
「もう呼び捨て!?」
「君の通っていた小学校は、ランドセルだったのかい?」
「それは……そうでしたが。それが何か?」
 私は杏奈の肢体を上から下まで余すことなくじっと見つめた。こうして横合いから眺めるとよくわかる。小学生を終えたばかりでありながら、大学生と言われても信じてしまいかねないほど自己主張を惜しまぬふくよかな胸。あの胸がランドセルとセットで存在していた時期があるなど、正気の沙汰ではない。
 今みたいにセーラー服ならともかく、いやセーラー服でもまずいが。こんなに胸の大きな美少女、かつ幼女時代の彼女に「ごきげんよう」などと無垢な笑顔で言われる場面を想像すると……誘拐したくなるな。
「ゆ、誘拐!?」
「ん、声に出ていたか」
 私はどうも、思ったことがすぐ口に出てしまうようだ。
「わ、わたくし……何かアナタの恨みを買うようなことをしましたの?」
「誤解しないでほしい。誘拐といっても、いかがわしいものじゃない」
「いかがわしくない誘拐ってなんですの!?」
「ちょっと脱がせて生で拝みたいとは思ったが、誓って変なことはしない」
 変なことはしないと言ったにもかかわらず、杏奈は青い顔をして私から机を離した。
「ア、アナタ、そういう趣味の人でしたの?」
「勘違いしてもらっては困る。断言してもいいが、私はノーマルだし、杏奈を笑い者にするつもりだって微塵もない。私が示しているのは、いたって純粋な信頼の意思表示だ」
「そう……でしたの? わたくしとしたことが、早とちりで申し訳――」
「あと、ほんの少しの性的好奇心だけだ」
「どこが純粋ですの!? 不純物が混じっていますわ!」
「そりゃあ君、許可をもらえるなら揉むくらいはするさ。揉みしだくさ」
「変態がいますわ……」
「何を言っているんだ。女子が女子の胸を揉むのはスキンシップ、友情の証。イヌが尻を嗅ぎ、サルが毛繕いをするのと同じこと。なんら恥じる行為ではない」
「先生、席替えを希望します」
「まあそう結論を急ぐことはない。私程度を変態と格付けしてしまっては、男子などどうなる。相対的に、この教室の半数が性犯罪者ということになってしまうよ?」
「そんなはずありませんわ!」
「杏奈、この世に女子の胸に興味がない男子なんていない。いつだって頭の中はおっぱいがいっぱいだ。一度性に触れたら最後、欲望の赴くまま、どこまでも突き進む飢えた獣に成り果てるだろうさ」
「そ、そんなはずも……ありませんわ」
「おや、声に自信がないね。ふふ、価値観が揺らぎ始めたかな?」
 私は小学校在学中、図書室に置いてあった〈体のしくみ〉関係の書籍を全て読破している。今では思春期男子の心理など手に取るようにわかる。
「ならこうしよう。杏奈がこの教室の中から男子を一人選ぶといい。その男子が女子の体になど興味がない不能――もとい、性欲を超越した聖人君子ならば、私が間違っていたと非を認め、杏奈へのセクハラは今後控えよう」
「セクハラだという自覚はありましたのね!?」
「ただし、その人物が性に興味津々であることが証明されたならば、その時は杏奈、挨拶代わりに毎日一回、君の胸を揉ませてもらおうか」
「い、いいでしょう! こう見えてわたくし、人を見る目には自信がありますのよ!」
 杏奈はぐるりと視線を一巡させ、私の左隣に座る男子に目を留めた。
「では、そこの彼を指名いたしますわ!」
 杏奈がビシィッ、と指差したのは、髪をブラウンカラーに染め、入学初日から学ランの第二ボタンまで外した男子だった。
「お、俺ですか?」
 意外な。てっきり、見るからにガリ勉な真面目系男子を選んでくるかと思ったのに。
 とはいえ、こちらとしては都合がいい。
 私はその男子の胸についた名札を確認した。
「瀬川(せがわ)君か。さっそく問おう。君は女体に興味津々かい?」
「あの……それに答えた場合の、俺のクラスでの立場は保障されてるんでしょうか」
「もちろんだ。男子からは正直者と称えられるだろう。女子からは毛虫のように嫌われ避けられるかもしれないが、プラスマイナスゼロということで問題ない。ちなみにノーコメントの場合は、イエスと同義ということでよろしく」
「それ問題大アリ……つうか、女子に嫌われるとか完璧マイナスじゃ……」
「そんなことはない。少なくとも私は君がどんな性癖の持ち主だったとしても普通に接する自信がある。君が日常的に『おっぱい見たーい。おっぱい揉みたーい』と連呼していても引くことはない」
「そんな奴いたら、男子から見てもドン引きなんですけど……」
「それはそれとして、どうなんだい? 君も男なら正直に答えたまえよ。さあさあッ」
「…………そりゃ……男なんで………………まあ、それなりには」
「杏奈、聞いたかい? これがリアルだ」
「そ、そんな……ッ!」
 杏奈は愕然とするが、私にとってはなんら驚くことのない事実だった。とはいえ、隠さず答えた瀬川君は評価されるべきだ。彼には何か礼をしなくてはなるまい。
「瀬川君、ご苦労。これを見て目の保養にでもしてくれ」
 私はスカートの端を掴み、ひょいっと軽く持ち上げた。
「キ、キャアキャアアアッ!? いいいきなり何するんですの何してくれてるんですの!?」
 杏奈の下着は白かった。
「恥ずかしいことを正直に答えてくれた彼へのささやかな礼だ」
 その瀬川君は指で鼻梁を摘み、机に突っ伏していた。はだけた学ランから覗くカッターシャツに赤い染みがついている。
「だったら自分のを見せなさいな! どうしてわたくしのスカートをめくるんですの!?」
「自分で自分のを? いやいや、そんなはしたない真似はさすがに私にもできないさ」
「そこになおりなさいッ!!」
 言うが早いか、真っ赤になってスカートを押さえていた杏奈が立ち上がり、鋭い手刀を脳天目掛けて振り下ろしてきた。私はそれを白羽取りで受け止めた。
「いいリアクションだ。ますます気に入った」
「わたくしは何から何まで気に入らないことだらけですわ!」
 篁とタイプは違うが、杏奈もまた、打てば確かに響く逸材だ。
 ギリギリとせめぎ合う私たちに、瀬川君以外の第三者から声がかかる。
「そこ、えー……瀧さんに穂村さん、親睦を深めるのは結構ですが、今は静かにしてください。ガイダンス中ですので」
 教師の注意にハッとした杏奈が手を引っ込め、羞恥に染まりながらしおしおと着席した。
「くっ、いらぬ恥をかいてしまったじゃありませんの」
「大声を出しているのは杏奈一人だけれどね」
「誰のせいだと……」
「しかし、これで私の勝ちは決まったな。彼もやはり男の子だということだ」
「ま、まだですわ。まだ彼が、アナタの同類だと証明されたわけではありません」
「杏奈、諦めろ。彼の頭の中は今真っ白になっている。(ショーツの色的な意味で)」
「諦めませんわ、認めませんわ! だってだって、彼はとても綺麗で真っ直ぐな目をしていますもの! きっと女性に対しても誠実ですわ!」
 誠実=エロくない、が成立するわけではないと思うが。
「下着を見ただけで鼻血を出してしまったのも、言ってみれば純情な証拠。好きな女性のことを一途に想い、たとえその身を賭してでも愛する人を守ろうとする。そんな義侠心に溢れた男性に違いありません!」
「杏奈、意地になって持ち上げすぎてやしないかい?」
 杏奈は身振り手振りを交えて瀬川君の無実を説いた。それこそ、被告人として法廷に立たされてしまった最愛の夫を懸命に弁護する妻のように。
「女性に興味があるのは、男子ならむしろ健全! 絶対に変態などではありません!」
「いや杏奈、それを言ったら勝負が成り立たないというか」
 私の声が聞こえていないのか、杏奈は私の机を挟んで身を乗り出し、ズズイと瀬川君に顔を近づけた。話は変わるが、その体勢、とても胸が強調されている。
「ですから、普通ですわよね? アナタは変態なんかじゃありませんわよね?」
 必死になりすぎた杏奈は、ちょっぴり目尻に涙を蓄えた上目遣いで、そうであってくれと訴えかけるようにして懇願した。さらには瀬川君の手を取って軽く引き寄せたことで、制服を内から盛り上げた杏奈の胸に、彼の手がほんのわずかに触れている。
 あの程度で当たるとか、どれだけ前に突き出ているのやら。
「ほ、穂村さん? あの、当たって――」
「普通だと、言ってくださいまし……ぐす」
 杏奈、それは問いかけじゃなく、もはや〈おねだり〉と呼ぶべきじゃないかい?
 本気で涙ぐみ、瀬川君を真摯に見つめる様子からも、計算による行為ではなく無意識の産物であることがわかる。いやもうね、反則ではないかと。
「はい、普通です。女性に興味があるのは俺に限ったことじゃないですが、俺、穂村さんのためなら死ねます。浮気とか絶対しません」
 瀬川君はキリリと精悍な顔つき(ただし鼻の両穴にティッシュ)で杏奈にそう宣言した。
 ……惚れたか。
 勝負の最中に相手を籠絡してしまうとは、杏奈、末恐ろしい子。
「ほら見なさい! この場に変態はアナタしかいません!」
 打って変わって自信満々、勝ち誇った態度で私に向き直った。
「杏奈、瀬川君の気持ちに応えてあげるのかい?」
「ええ、彼とは良いお友達になれますわ」
 形勢は逆転したとばかりに踏ん反り返っている。杏奈はわかっていないようだが、事実上の「ごめんなさい」だった。
 瀬川君は、またしても机に突っ伏してしまった。
「認めよう。私の負けだ」
「あら、潔いこと」
「私が間違っていた。世間知らずな私は、どうやら知識だけで物事の全てを理解したつもりになっていたようだ」
 まさかあの状況で、瀬川君がエロスではなく愛に目覚めてしまうとは。私の完敗だ。
「私はこれまで、あまり人と関わろうとしない人生を歩んできた。当然、友達なんてできやしない。一人もいなかったわけじゃないが、それでも寂しい生き方をしていたと思う。人付き合いに関して、私は絶対的に経験値が不足しているようだ。その弊害が、こうして不器用なやり方で表れてしまった」
「アナタ……」
 私が至らないせいで、杏奈と瀬川君には迷惑をかけた。二人に謝らなくては。
「すまなかった。全ての非は私にある」
 そして、他にも間違いに気づいたことがある。
「友達を作るのに、こんな駆け引きのようなことは必要なかったんだな。今さら後悔しても遅いが」
 杏奈がそっと、私の手を包み込むようにして自分の手を被せてきた。
「いいえ。わたくしは、過ちを認めることができるアナタに敬意を表します。まだ十分にやり直しができますわ」
 いつしか、教室の中で喋っているのは私たちだけになっていた。クラスメイトたち全員が私たちの遣り取りが行き着く先に注目している。先ほど注意してきた担任でさえ、ガイダンスを中断して見守ってくれていた。
「無理して個性を出そうとせずとも、アナタの気持ちはちゃんと伝わりました。ですから今度は、ありのままの自分を見せてくださいな」
「ありのままの自分、か。そうだな……。たった一言で済むことだったのに、ずいぶんと回り道をしてしまったようだ」
「ええ、仕切り直しましょう」
 そう、ただ一言口にするだけでよかったのだ。
「杏奈」
 私は杏奈を。
「瀧智早さん」
 杏奈は私を。
 真っ直ぐに見つめ、私たちは互いに素直な気持ちを打ち明けた。
「私に、君の胸を揉ませてくれ」
「わたくしと友達に――て、アナタどれだけ揉みたいんですの!?」
 教室全体が盛大にズッコケた。
「あと、ついでに友達になってくれ」
「つ、ついで……ぉおお断りですわッ!」
 憤怒の形相で杏奈がいきり立ち、私が迎え撃つ。
「第二ラウンドだな。はたして君の技が私に通用するかな?」
「ええい、ちょこざいな! 成敗してくれます!」
 杏奈の攻撃をひらりひらりとかわしていくにつれ、私はかつてないほど気持ちが高揚していくのを感じた。誰かをいじってからかうことが、これほど楽しいとは。
 初めてできた女子友との交流に、このまま花咲かせていたいところだが、喧騒に包まれた状況を見兼ねた担任がこめかみに青筋を立て、この場を収拾する一言を言い放った。
「そこの二人、廊下に立っていなさい」          


          



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出版:宝島社
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無題
スクールライブ・オンライン2
著者:木野 裕喜
出版:宝島社
(2013-11-9)
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