そんなこんな

河童の朝は早い。
トントントントン台所で包丁がまな板を叩く音が聞こえる。
「おう、おきたか人間。まず顔を洗え」
河童は水掻きのついた手でタオルを渡す。私は受け取り洗面台で顔を洗う。
食卓にはキュウリサンドとキュウリジュース、キュウリジュースは千切りキュウリをガラスのコップに入れて上から氷で重しをし、三ツ矢サイダーをそそいだモノだ。色鮮やかでなにげに旨い。
河童はキュウリを食う。
ひゅるりと一口で一本を食う。
噛んだりしない。喉越しを楽しむ感じ。
「河童。いつまでここにいるんだ」
「おまえの望みを叶えるまでだ」
「俺の望みは自分で叶える。お前の力はいらない」
河童はニヤリとこっちを見ていやらしく笑う。
「お前みたいな何も才能の無い三十男に何が出来る? いつまで自分の才能を信じる? ねーよ才能。お前にはなんにもねーよ。諦めろ、俺に頼れ、俺がお前を時代の寵(ちょう)児(じ)にしてやるよ」
「出て行け河童」
「つれねーな人間」
「俺の視界から消えろ河童!」
「ぐすん、昨日の夜はあんなに激しかったのに…………」
それを言うなや――――――




※本作はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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