石積みの少女③(最終章)
著:里田和登
イラスト:先島えのき
僕はしばらく大学を休み、部屋の中をのたうち回るだけの生活に入った。
やがて、この報われない反復行動が、単なる自慰行為に過ぎないことを悟り、
ある晴れた日のこと、鉱石を抱えて、最寄りの河川敷に向かった。
ごつごつとした岩がたくさんあり、大きさも申し分ない。
1つ目の石碑が完成した頃には、空の色は赤と紫のごった煮になっていて、
いらだちの原因になっていた汗も、すっかり引いていた。
振り返ると、僕とその隣に、2つの長い影が落ちていた。
僕はその後も、石を積み続けた。
川べりの岩をめくり上げ、裏側にはりついたかわいそうな生きものを、
気持ち悪い、気持ち悪いといって、たのしむ子供たちの声が聞こえる。
この世界でも、鉱石は可能な限りの働きをみせた。
なぐさめ品として支給できるのは、
この鉱石にあらかじめ収録されているもの、つまり情報の類に限られるようで、
10点で得られるはずの机を所望しても、持ち点が減ることもなければ、
ある日突然(机のようなもの)が降ってくることもなかった。
この日、12個目の石碑が完成し、僕の持ち点は12点となった。
高架を通過する、せわしない列車の音を聞きながら、
ただぼんやりと、12の影を視界に入れていく。続きを読む