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魔法少女育成計画

特別短編『魔王を討伐したいから』②

特別短編タイトル11










《2》

【外交部門の提出書類は規定の形式に沿って作らなければならない。それは魔王パムであっても例外ではない】
 魔王パムがノートパソコンに向かっている。どうやら今後の訓練計画について打ちこんでいるようだが、タイピングが覚束ない。左右の人差し指を一本ずつ立てて、一文字一文字打ちこんでいるが、それでも時折失敗して「ああ!」「そっちじゃない!」なんてことを叫んだり、「これどうやって消すんだろう」「元のページに戻す方法は……」なんてことで止まったりと一向に進まない。
 場面が変わった。
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特別短編『魔王を討伐したいから』①

特別短編タイトル11










《1》

 魔王パム調査班は、今まで誰も成し遂げた者がいない「魔王退治」を成功させるべく結成された。ただしその真なる目的は、首謀者である電子妖精ファヴ以外知る者はいない。
 ファヴにはお気に入りの魔法少女「クラムベリー」を魔法少女試験の試験官に就かせるという大願があり、それを成就するための「魔王退治」だった。
 魔法少女試験の試験官は、通常ベテランの魔法少女が務める。才気に溢れるだけでは、新人が試験官を務めることはない。ファヴには新たな試験官を推薦をすることはできたが、新人を推薦したところでその意見が掬い上げられることはまず無いだろう。新人が試験官になるという横紙破りを果たすためには、相応の殊勲が必要になる。
 その殊勲が「魔王退治」だ。退治といっても殺害や勝利が目的ではない。一撃入れればそれでいい。
 魔王パムは強者として名高く、百や二百ではきかないとされる武功を誇り、その強さに惹かれて彼女の元に集った魔法少女達を指導鞭撻し、さらなる高みへ導いていた。
 その集団は通称「魔王塾」と呼ばれ、強さを求める魔法少女ならまずそこへ向かうべしとされている。私的な集いでありながら、ある種の独立した共同体と化し、上層部には「武力を一箇所に集めていいものか」と危険視する者もいたが、パムの所属している外交部門が「サークル活動なので問題無し!」と片付けていたため、それ以上口を挟まれることもなく、今日も彼女達は強さを追い求めて青春を謳歌している。
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特別短編『魔王を討伐したいから』公開!

特別短編タイトル11










年が明けて半月ほどが過ぎました。非常に今さらですが
あけましておめでとうございます!
本年もよろしくお願いいたします。

というわけで、更新が遅くなりましたが、ご好評感謝企画
『魔法少女育成計画limited』発売記念特別短編
第3弾の掲載です!


今回メインを務めるは「魔王パム」。
魔王パムと森の音楽家クラムベリーとの
師弟関係についての物語になっております。

特別短編第3弾、『魔王を討伐したいから』はこちらからお楽しみください!

第4弾は来週公開予定です!


なお、特別短編第1弾と第2弾は、以下のリンクからどうぞ!
第一弾『ゴーグルと亀』
第二弾『とっととミュージック』



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魔法少女育成計画 limited (後) (このライトノベルがすごい! 文庫)
著者:遠藤 浅蜊
販売:宝島社
(2013-12-09)

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著者:遠藤 浅蜊
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著者:遠藤 浅蜊
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著者:遠藤 浅蜊
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著者:遠藤 浅蜊
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http://konorano.jp/(このラノ大賞公式)
https://twitter.com/konorano_jp(このラノツイッター) 

特別短編『とっととミュージック』③

特別短編タイトル10










《3》

 ブーツの踵を床に打ちつけた。二人の魔法少女以外は誰もいない廃墟だけに、音が響く。
 ファヴがこちらに話を回した理由が透けて見えた。あの電子妖精は好きなことは進んでやるが、面倒なことは極力避ける。
「ファヴは確かにいってたのね。マジカルデイジーオープニングテーマの作詞作曲をやったのは森の音楽家クラムベリーだって。自分がやったという名目になってるけど、名前を出しただけで仕事は全部クラムベリーに丸投げしたんだって」
 クラムベリーは苦笑し、肩の薔薇が揺れた。金色の花粉が散り、消える。
「確かにそういった仕事もやらせていただきました」
「おお! 素晴らしいね! 伊達に音楽家なんて名乗ってないね!」
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特別短編『とっととミュージック』②

特別短編タイトル10










《2》

 八雲菊が家に帰りついた時、そこには魔法少女の客がいた。
「どーもね! はじめまして! トットポップってケチな魔法少女がやって来たね!」
「え? いや、え? な、なに?」
 握手を求められ、なんとなく応じてしまう。混乱した。混乱しないわけがない。大学で授業を受け、バイト先の工場では大重量の干物をいくつも移動させ、営業時間ギリギリの銭湯で汗を流し、その後魔法少女に変身して地域の治安を守るべく活動してきた。具体的にいうと児童公園を中心にゴミ拾いをしてきた。
 くたくたに疲れて帰宅し、あとは布団に倒れて眠るだけだと思っていたのに、なぜかボロアパートのドアは鍵がかかっていなかった。まさか鍵をかけずに家を出たのか、でも盗まれて困るような物ってなにかあったっけとドアを開けるとそこにはギターを横に置き畳の上で正座しているパンキッシュなバンドウーマンがいた。
 これで混乱しないわけがない。
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特別短編『とっととミュージック』①

特別短編タイトル10










《1》

 耳を塞ぎたくなるような衝撃音が二度響いた。一度目は乱暴にドアを開ける音で、二度目は乱暴な手段で開けたドアが壁にぶつかって跳ね返った音だ。
 こんな方法でこの部屋に入ってくる知り合いは一人しかいない。
「ハーイ! あなたの恋人トットポップちゃんでーす! おひさねー!」
 テンションの高さが鬱陶しくもわずらわしい。
 ロングTシャツに武骨なギターという組み合わせで全体に髑髏モチーフを散らし、唇のピアスをきらりと光らせ、「舞台メイクはスターとして当然」とうそぶいて魔法少女の癖にバッチリと化粧まで決め、パンクロッカーらしさを追求している。
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特別短編『とっととミュージック』公開!

特別短編タイトル10










この11月と12月に発売された
『魔法少女育成計画limited』!
および『魔法少女育成計画』シリーズ!
お陰様で好評発売中です!

というわけで、年の瀬も押し迫ってまいりましたが、
ご好評感謝企画『魔法少女育成計画limited』特別短編
第2弾の掲載です!


今回の主人公は「トットポップ」。
彼女が反体制派と行動を共にすることになった、
そのきっかけについての物語です。

特別短編第2弾、『とっととミュージック』はこちらからお楽しみください!

ちなみに第3弾の公開は年明けになる予定です。
それでは皆様、よいお年を!


なお、特別短編第1弾『ゴーグルと亀』はこちらからどうぞ!

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魔法少女育成計画 limited (後) (このライトノベルがすごい! 文庫)
著者:遠藤 浅蜊
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魔法少女育成計画 limited (前) (このライトノベルがすごい! 文庫)
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特別短編『ゴーグルと亀』③

特別短編タイトル9










《3》

 テプセケメイの隣に腰掛け、紙皿とお茶を受け取り、マナの顔を見た。カーテンから漏れた光で眼鏡が光り、瞳が見えない。特徴的な巻き毛はストレートに戻され布団の中に潜りこんでいた。量販店で売っていそうなスウェットを着こみ、長期入院の患者というよりはだらしない怠け者というふうにも見える。
 窓の外に目を向けたまま、ムースを一口食べ、二口食べた。日の光に照らされているせいか、顔色がとても白い。
「そっちは、どうだ」
「特に変わりなく、という感じです。上の方は後片付けで忙しいらしいですけど」
「そうか……忙しさが一段落ついたら、そっちの上司と会っておきたい。話を通してもらうことはできるか?」
「ええ、私でできることでしたら」
「この事件のことをもっと調べておきたい」
 マナはムースを切り分け、もう一口食べた。顔が少し色を取り戻しているように見えた。
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特別短編『ゴーグルと亀』②

特別短編タイトル9










《2》

 テプセケメイの奇行を窘めつつ、家の中に籠って鬱々としている。一週間、二週間とそんな日々を過ごし、三週間目になって上司から連絡があった。
 病院名、病棟と病室、それに時間帯を教えられた。
「マナ班長のお父上から許可をいただいた。現在療養中ではあるが、本人にすべきことはなく退屈しているのだそうだ。見舞いに来てくれれば嬉しい、とのことだよ。私は後始末で忙しいからそちらでよろしくやっておいてほしい」
 お見舞い。マナの様子が見たいという気持ちはある。申し訳なくて顔を合わせられないという気持ちもある。どちらの気持ちも本心からのものだ。
「お見舞い、知ってる。テレビで見た。メイも行きたい」
 テプセケメイは行きたがっている。身内がいいといってくれていても、マナ本人はどう思っているのだろうか。
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特別短編『ゴーグルと亀』①

特別短編タイトル9










《1》

  魔法少女の肉体は頑健にできているが、魔法使いは体力も自己治癒力も人間と大して変わらない。ただし自前の魔法によって怪我を治療することができる。そのため普通の怪我を負っても入院するようなことはない。
 では魔法使いにとって病院は不要なのか?
 そんなことはない。魔法使いが病院を利用することはある。軽い風邪のために鶏を買ってきてから首をかっさばいて長々と詠唱し、なんて面倒な儀式魔法を執り行うくらいなら医者に風邪薬を処方してもらった方が手間も金も節約できる。
 それに病院を必要とする理由は病気や怪我だけではない。魔法のかかった毒や薬によって中毒を起こしたりすれば、薬効を抜くために専門の病院に入院する。ただの毒や薬と違い、魔法に纏わる物であれば慎重にし過ぎるということはない。専門家の元で時間をかけて正しい処置を施さなければ後遺症が残ってしまう。
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