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モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣)

モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣)6 Gess2

人気の「モテ泣き」シリーズ、

8月(6巻)・9月(7巻)の

連続刊行&完結です!

いよいよクライマックスゥ!!!!
!!!!

な、6巻冒頭をちょっと公開!!
6巻表紙CMYK



























                              著:谷 春慶/イラスト:奈月ここ



地獄の蓋フルオープン! 死者の霊が溢れだし、街はパニック状態に!! 
だがゲス男・望月砕月はそんな中でもビョーキ全開! 
迫り来る死者、ハルマラ率いるウィザード軍団、
そして事件の黒幕・オピウムと激しい攻防を繰り広げながら、
修羅場を発生しながら、砕月は事件の真相に迫る! 
が、明らかになっていく真実は、ベリーハードなものだった……。
けど、ゲス男・望月砕月はそんな中でもビョーキ全開なんですけどね!!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

Prologue【善良なゲスは公僕である】

 雲霞のような影がけぶって、周囲の見通しは悪かった。その上、空では紫がかったドス黒い雲が幾重にもわだかまり、おまけに僕らがいるのは森のなか。うす暗くて、いろんなものの輪郭だって曖昧だ。
 ええ、はい、現在進行形で世界がピンチだったりします。現実逃避の意味も込めて内心で「世界が滅ぶとか、なにそれ超ウケるんですけど?」とぼやいてみた……うん、僕こと望月砕月はメンタル的にそろそろ限界かもしれません。
「ゲツ君、後ろ!」
 金髪美少女ウバタマことタマさんの声に、僕は背後も確認せず後ろ蹴りを放つ。羽毛の塊を蹴り抜いたような感覚。勢いのまま振り返れば、黒い物体が綿埃のようにボロボロと崩れ落ちていく。ほんと、もう、こいつら、倒しても倒してもキリがない。
 次から次に襲いかかってくるのは質量をもった影の化け物だ。
 黒い影が人の輪郭を持ち、その影の濃淡で目と口くらいは判別できる。基本的には真っ黒なんだけど、こちらをつかんだりする時だけ体の一部が実体化する。動きは遅いし、殴れば崩れる程度にもろい。でも、油断はできない。さっき足首をつかまれた時にわかったことだけど、こいつら力が強いのだ。それ以上に厄介なのは、この数の多さ。木々の間にユラユラと立っていて、ゆっくりと、でも確実に包囲網をせばめてくる。
 この影の化け物を黄泉醜女というらしい。ちなみに黄泉醜女というのは、日本神話でいうあの世、黄泉の国に出てくるゾンビみたいな鬼なのだとか、僕の義父である望月大和が教えてくれた。その義父さんも、僕らと一緒になって黄泉醜女をボコっている。
 不意に後ろから肩をつかまれた。
 とっさに反転しながら振りほどいて、背後の気配と距離を取る。黒い影がうめきながらよろける。そいつは他の黄泉醜女とは違って、剣のような武器を持っていた。だが、動きは緩慢だ。剣をもった黄泉醜女は、その武器を使わずに僕をつかもうと手をのばしてくる。ハイキックをこめかみにブチ込んでやった。顔がサッカーボールのように飛んでいき、体のほうはあっというまに霧散する。
 ええい! きりがない! 負けるとは思わないけど、スタミナにだって限界はある。それなのに、下山できてる気がしない。タマもどうやら同じ気持ちだったらしく……
「もう、うっとうしい!」
 癇癪を起こしたような声をあげ、タマが大鎌を脇構えに構えた。一呼吸置く。大鎌の刃がうっすらと青白い光を帯びた。
 すごく嫌な予感がする。
「……ゲツ君、伏せて!」
 タマが放射状に衝撃波を放った瞬間、僕は勢いよく倒れ込んだ。自然と土下座の上位概念である五体投地のような姿勢。そんな僕の上を青白い閃光がすっ飛んでいく。バサバサと葉っぱの音が聞こえるけど、どうやらその辺の木々ごと敵を一網打尽にしたみたい……
 あいかわらずタマはムチャクチャなことをする。さすがはウィザードだ。世界をオワコンにしちゃうバグをサーチ&デストロイするスーパーナチュラルなソルジャーなだけある。
「……タマちゃん、僕も射線上にいたんだけど?」
 五体投地状態の義父さんが抗議の声をあげていた。実父じゃないけど、とっさに伏せた時の姿勢が同じものになってしまうとか、やっぱり僕らは親子だと思う。ちなみに僕はバグを倒す才能を持つデバッガという人間らしい。で、義父さんもデバッガなんだってさ。
「生きててよかったね☆」
 今日もキラキラスマイルを浮かべるタマさんだった。
 癖一つないサラサラの金髪に紫色の瞳、見た目だけなら天使が空から降ってきたような絶世の美少女だけど、性格がドSであり、基本的にオールレンジで当たりがきつい。
「兄ぃ、大丈夫ですか!」
 その声の主にむけて僕は顔をあげた。
 猫耳ミニスカ和服姿のロリっ子少女、ハピ子が僕を見下ろしていた。ちなみにハピ子はバグであり、本来ならウィザードの討伐対象なんだけど、実害がないということでスルーされている。その辺は僕の政治力(土下座外交)のたまものだ。
 そんなハピ子は背中にロリっ子少女を背負っていた。背中の女の子に意識はないけど、死んでいるわけではない。彼女の名前はアルルーナ、ウィザードのなかでも特別に偉くて強くてかわいいノーブルウィザードという存在らしい。とはいえ、今は無防備状態だからハピ子が背負いながら守らざるをえなかった。最初は義父さんが背負ってたんだけど、戦えないからってハピ子が背負うことになったのだ。
 立ちあがって体についた土を払う僕のもとに、タマも駆け寄ってきた。
「ほら、ボケッとしてないで逃げるよ」
 タマが僕の右手を取ろうとする前に、もう一人の金髪ツインテールロリ美少女が僕の左手をつかむ。
「タマさん、この人はあたしがいやいや責任もって守るので、足手まといで使えない上まったく必要ないこの人の心配なんて一切しなくていいよ。むしろ忘れちゃっていいから、タマさんは逃げ道確保に勤しんでください」
 僕の左手を力強く握って放さないのはウィザードのカンナちゃんだ。
 カンナちゃんはタマのかつての相棒で、昔はタマと一緒にバグ退治をしていたらしい。でも、いろいろあって西行法師っていうバグと同化して暴れ回っていた。そんな彼女を野生の日本男児である僕が救ってみせたのだ。だからこそ、こうして僕の手を握っているのだろう。でも、勘弁してほしい。
「カンナちゃん、手を放してくれないか?」
「え? どうして?」
「それはね、僕の骨がミシミシ言ってるからだよ」
 もっというと、笑ってるカンナちゃんから明確な殺意のような視線を感じるからだよ。
「だいじょぶだいじょぶ、自分を信じてください☆」
「ちょっ! 力が増した! これ絶対砕ける!」
 半泣きで叫んだ僕の前でタマがため息をついた。
「カンナ、ゲツ君は私の道具だから壊しちゃダメ。それに、ゲツ君の護衛は私の役割でしょ? カンナは前衛だって中年ホストに言われたじゃん」
 ちなみにタマの言う中年ホストとは僕の義父さんのことだ。
「はい、わかりました、タマさん❤」
 満面の笑みを浮かべたカンナちゃんは僕の手を放してくれた。それにしても、カンナちゃんからは、タマに対する好き好き大好き光線が放たれている気がしてならない。
 そんな僕らのところに義父さんも駆け寄ってくる。
「仲いいのはかまわないけど、今のうちに囲みを突破しよう」
 義父さんとカンナちゃんが先行し、タマと僕とハピ子がそれに続く。
 城址のある山は、山道を外れると雑木林になっている。しかも、場所によっては崖のような急こう配なので、とにもかくにも走りにくい。その上、暗いから、ちょっと気を抜けばなにかに足がひっかかるし、無造作に伸びる木の枝が腕や顔に小さい傷を作っていく。でも、気にせず走る。それにしても……
「これから、どうなっちゃうのかな?」
 木の枝をつかんで傾斜をおりながらつぶやいた。後ろから軽(かろ)やかに下りてくるタマが「そんなの、どうにかするしかないよ」と返してくる。
「兄ぃ、心配なさらなくても、兄ぃならきっと大丈夫です!」
 前を行くハピ子の言葉には、まったくなんの根拠もないんだけど、彼女はガチに本気で言ってるから不思議と元気が出てくる。
「ありがとう、がんばるよ」
 とはいえ、今がピンチなことに変わりはない。
 バグが暴走して自分好みに世界を創り変えることを神蝕という。
 で、この神蝕ってものが起きると、世界はその狂ったルールを許容できなくなって自家中毒に陥り、崩壊してしまうらしい。よくわかんないけど、神蝕が起きたら世界はオワコンということだ。そんでもって、現在、その神蝕が起きちゃってるわけです。
 で、その神蝕を起こしたのが元ノーブルウィザードのオピウムという女の人で「ついカッとなって殺った、今も反省してない」とか言い出しそうなプッツン系。こんなことは言いたくないけど、ウィザードって人格的にアレな人が多い気がする。
「痛いっ!」
 となりを走るタマに肩を殴られた。非難まじりの視線をむけたら、ジト目で返される。
「なんか、今、すごく失礼なこと考えてたでしょ?」
「考えてないよ。タマはいつもかわいいなとは思ってたけど。なあ、タマ、この戦いが終わったら僕と結婚してくれ」
 女の子と見れば、意志に反して口説いたりセクハラしてしまう僕のビョーキに、世界の危機とか関係ない。そんなんだから日常的に修羅場になるんだよ。
「バカなこと言っ!」
 タマが大鎌ぶん回した。木の上から黄泉醜女が落ちてきたのだ。足をとめたところで、再び黄泉醜女に囲まれる。先行していた義父さんやカンナちゃんも立ちどまって迎撃していた。僕も目につく奴を片っ端から殴って蹴ってはっ倒す。
 ふと肩をつかまれた。振り返りながらハイキック。
「またお前か!」
 なんか一体だけ剣を持って武装した奴がいるんだよね。まあ、武器持ってるのにそれ使ってこないから余裕で倒せるんだけど……さっき倒したのと違うのかな? それとも同じ奴なのかな? うーん、こいつら消してもすぐに復活するのか?
「全員伏せて!」
 タマの声にすぐさま五体投地。タマはその場で一回転、大鎌を振り回す。ピシュンと音を立て、青白い閃光が周囲一帯を横一文字に薙ぎ払う。大量の黄泉醜女も木々やらなにやらも、まとめてぶっ倒れた。それにしても、タマがムチャクチャ強くなってる気がするんだけど気のせいかな? 僕と出会ったころは大鎌を具現化するだけで精一杯だったのにね。
 五体投地から立ちあがった義父さんはすぐに「敵の数がどんどん増えてるから、すぐに移動を開始!」と叫んだ。僕もすぐに立ちあがり……

「ほう、どこへ行くと言うのだ?」

 そのハスキーボイスに誰もが動きをとめた。
 振り返る。タマが伐採した木々は折り重なるようにして倒れてるんだけど、その樹木のむこう側に人影があった。
 神蝕を起こした張本人で黒幕、オピウム……
髪のポニーテールに気の強そうな整った顔立ち、更には露出の多いチューブトップとホットパンツのようなウィザードの制服。こぼれんばかりの巨乳なんだけど、こういう危機的状況下においても、女の子の胸とかヘソとか太ももに目が行ってしまう僕ってほんとにダメ人間だと思う。それを周囲にバレたくないから、あえて眉間に皺を寄せて「今、シリアスです」アピールを忘れない。でも、谷間を凝視してしまう。男に生まれてごめんなさい。でも、僕が悪いっていうよりオピウムの格好が悪いんだと思う。
 真剣な顔してアホなことを考える僕を置いて、義父さんがオピウムへと大剣を投げ飛ばした。緑色の大剣は一条の光となってオピウムへと迫る。だが、いつのまにか異形の剣がオピウムの手の内にあった。諸刃の直刀からは木の枝のように互い違いに小さな刃が伸び、剣から剣が生えているような形をしている。七支刀だ。
 オピウムは飛来する義父さんの大剣を七支刀で斬り払い、粉みじんに打ち砕いた。
「大和、貴様のイメージでは……」
 オピウムが嘲笑を浮かべた瞬間、義父さんがパチンと指を鳴らした。コナゴナになった剣の欠片が一斉に赤く輝いた。火花が一気に弾ける。大爆発。オピウムは紅蓮の炎に周囲の木々ごと飲み込まれた。遅れてやってくる爆音と衝撃の余波に、僕も顔を伏せる。
「この隙に撤退。急げ!」
 義父さんの声。反応しようと意識を傾ける。
 噴煙のなかから稲妻をまとった青白い閃光が放たれた。
 雷鳴は義父さん目がけて飛来し、地面を穿つ。大爆発が大地を巻きあげる。先行してた義父さん、カンナちゃん、ハピ子が粉塵のなかへと消えていく。遅れてやってきた衝撃波に僕はふっ飛ばされた。舞いあがる煙や土埃に、僕は這いつくばったまま目を細める。まったくなんにも見えない。みんなは大丈夫?
 ふと、足音が聞こえた。
「……砕月、約束どおり、お前を迎えに来た」
 オピウムが煙のなかから現れた。義父さんの起こした爆発の被害なんて、まったく感じられない綺麗な顔。そして優しい微笑み。くそぅ、極悪人のくるくるぱーだってわかってるのに……どんなにがんばっても、おっぱいの大きい綺麗な女の人にしか見えない。
「愛の言葉ほど無力なものはない。なぜなら、僕とあなたは、こうして敵同士。まるでロミオとジュリエットのように、この世界が二人を引き裂くんだよ。ああ、愛しい君よ、どうか悲しまないでおくれ」
 僕のビョーキが、なんかわけのわからないこと言ってる。なんで、ひざまずきながら胸に手を当て「愛しい君よ」と手をのばしてるんだろう? 役者気取りか?
 ふと視界の斜め下から光る牙が跳ねあがり、オピウムへと迫った。
 タマの大鎌だ。タマは僕の横からオピウムへと踏み込み、大鎌を斬りあげる。
「砂利が」
 忌々しげにつぶやくオピウム。逆袈裟に斬りあげられた大鎌は、片手でなんなくつかまれる。バキリと音が鳴った。大鎌がガラス細工のように砕け散る。だが、白い影はとまらない。得物を失おうとも闘争本能は枯渇せず、その細い肢体をフルに使って鋭い打撃を叩き込む。ブルース・リーのジークンドーみたいにタマが拳を乱打していく。顔や胸を狙う打撃、膝を押さえるような蹴り。その全てをオピウムはさばき、受ける。不意にタマの構えが変わった。直線的な攻撃が一転、体が開き、縮み、腕がぶん回る。フック軌道のレバーブロー。文句ない一撃がオピウムをとらえる。でも、オピウムはピクリとも動かない。
「蠅(はえ)だな」
 僕には初動がつかめなかった。握られた拳が無造作にタマの横っ面へと叩き込まれている。その一撃でタマの体幹から力が抜けた。タマの姿勢が崩れる。オピウムの手には、青白く輝く七支刀がいつのまにか握られている。ふりかぶった。
 僕は、とっさにタマの体を引いて巻き込むように抱きかかえ、回転しながら倒れる。背中を熱いなにかが通り過ぎる。尖った熱さは鋭い痛みに変わる。
 斬られた。
 肩甲骨の当たりから斜めに痛みが奔っている。倒れたおかげで、骨までは断たれてはいない。でも、痛くて立てそうもない。思考が混線し、軽い瞬時のパニック。けど、僕も慣れたもので、すぐに状況を把握……タマは守れた。
「タマ……」
 呼びかけたけど反応がない。僕の体の下敷きになったタマは目を開いているけど、焦点が合っていなかった。どうやら裏拳のダメージがまだ残っているようだ。僕は僕で痛みにうめき声が漏れてしまう。でも、デバッガの僕なら背中の傷は治せる……はずだ。現実世界でどこまでその力が反映されるのかは知らないけど……
「砕月、なぜ邪魔をする? なぜ庇う? なぜ私の言うことをきかない?」
 背後で困惑しているような声が聞こえた。それがわからないってのは、やっぱりオピウムはプッツン系女子だってことだ。背中は痛むけど首だけ振り返り、後ろに視線をむける。
「僕とあなたは敵同士。これでいい……もう、これであなたが誰かを傷つける姿を見ないですむ」
 なんかよくわかんないけど、僕のビョーキが既に死を覚悟しちゃってた。
「本当は敵も味方もない。全ては僕が愛すべき対象。ああ、愛しい君たちよ、どうか、もうこれ以上、誰も傷つかないでおくれ」
 今回のビョーキがなにキャラなのか、僕にもよくわからない。オピウムはなにか信じられないものでも見たかのように顔面蒼白になっていた。怒りのせいか口元が震えている。
「……砕月、お前はまた私の邪魔をするというのか? また行くなと私をとめるのか? 泣き叫んで私を惑わすのか? これはお前のためでもあるんだぞ!」
 いきなりシャウトされたって、なに言ってんのかわからない。
「愛に国境も常識も過去も関係ない! ラブ&ピースの精神は、まず男女の間から育(はぐく)んでいくべきじゃないだろうか? そりゃ互いに仇敵同士、すぐに心を開くのは難しいさ。でも、とりあえず体は開いていこう! いや、なんなら心は開かなくていい! 体だけでも開いていこう!!」
 すいません、誰でもいいので、僕のビョーキを殺してください。
 ふと、オピウムの瞳から輝きが失せた。
「……愛しき我が汝妹の命を子の一つ木に易へむと謂へや」
 かすれ震えるその声は、それまでのオピウムのものとは違っていた。その異常な変化と雰囲気に、痛みさえ忘れる。明確な殺気に、ゾクリと背筋が毛羽立った。
 あ、僕、殺される。そう悟った僕は、とっさにタマを抱きしめた。
「タマ! 僕はいつだって心も体もフルオープンだからね!」
 今際の際に出てくる発言がこれじゃあ、死んでも死にきれねぇ……

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モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣)6 Gess1


人気の「モテ泣き」シリーズ、

6巻、8月10日発売です!

いよいよクライマックス!!!!
!!!!

(いろんな意味で)
6巻表紙CMYK



























                              著:谷 春慶/イラスト:奈月ここ



地獄の蓋フルオープン! 死者の霊が溢れだし、街はパニック状態に!! 
だがゲス男・望月砕月はそんな中でもビョーキ全開! 
迫り来る死者、ハルマラ率いるウィザード軍団、
そして事件の黒幕・オピウムと激しい攻防を繰り広げながら、
修羅場を発生しながら、砕月は事件の真相に迫る! 
が、明らかになっていく真実は、ベリーハードなものだった……。
けど、ゲス男・望月砕月はそんな中でもビョーキ全開なんですけどね!!


8月10日の6巻、9月の7巻の連続刊行に先駆け、
「モテ泣き」シリーズについて、一挙解説!

まずは、前巻
『モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣)5』では、
いったいどんな事になっちゃってたのか、一部紹介します!


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「兄ぃ、お見事です」ハピ子
 横に立つハピ子の頭をぽんぽんと撫でた。
「ハピ子、ありがとう。体は大丈夫?」
「ぜんぜん平気です。兄ぃのためにゃらウチはたとえ火のにゃか水のにゃかです」
 ピコピコ猫耳が動いていた。ああ、もう抱きしめたいな、この子。
 けれども、僕が暴走するより先に足音が近づいてきた。
 ホミカ及びミドルウィザードの面々だ。彼女たちはそれぞれ武器を携え、警戒を解いていない。その後ろからハルマラが現れる。
「攻撃目標だったバグの排除を確認しました。状況は終了ですわ」
「しかし、ハルマラ様……」
 ここまで来てもホミカの敵意は消えないようだ。僕は苦笑を浮かべてホミカにウィンク。ホミカは舌打ちを鳴らし……
「……了解しました。各自武装を解け。こいつらはボクらの敵ではない」
 ホミカの言葉にミドルウィザードたちは武装を解く。
「作戦を第二フェイズへ移行しますわ。ホミカ、部隊を連れてアルルーナ様との合流ポイントへと向かいなさい」
「……了解しました。行くぞ」
 ミドルウィザードたちは軽やかに空へと飛び立っていく。見上げたらホミカのパンツが見えそうで見えない。いや、そんなことじゃねぇ。
「ホミカ、ありがとう」
 勢いよくこちらを振りかえり、ホミカは忌々しげに僕をにらむ。僕のとなりでハピ子が威嚇していた。
「ボクがいつかお前らまとめて削除してやるからな!」
 それだけ言ってホミカは飛び去っていった。
 ハルマラはため息をつきつつ「もうしわけありません」とだけ言う。
「まあ、いいさ。それよりハルマラもお疲れ様。ありがとう、助けてくれて」
「当然のことですわ、砕月様」
 寝転がっていたタマがカンナちゃんごと起き上がる。
「……砕月様?」
 やっぱり反応するよね? 僕だってする。ハルマラは悠然とタマの前に立ち、微笑みかけた。
「あなたを認めましょう、ロウアー……いえ、ウバタマ」ハルマラ
「今、ゲツ君のこと砕月様って言わなかった?」
「ええ、敬愛する殿方に尊称をつけるのは当然のことではなくて?」
 くすりとハルマラは笑う。
「ウィザードとしても女としても負けるつもりはなくてよ」
「なに、いきなりわけのわからないこと言ってるのかな?」
「わたくしは砕月様をお慕いしております」
 ハピ子が「さすがは兄ぃです」と感激したような顔で僕を見ている。その反応の意味がわからない。
「ウバタマ、あなたには負けませんわ」
「勝手に喧嘩売られても困るんだけどな。奴隷の所有権争いなら買うけど?」
 道具から奴隷にランクアップ……って言っていいのかな? 判断に困る。
「気づいていないのならかまいませんわ。こちらとしても、それならそれで好都合ですもの。あとで後悔なさらぬように」
 くるりと踵を返し僕へと視線を向けてくる。
「それと砕月様……」
「あの、その呼び方は……ちょっと慣れないというか」
「わたくし、こう見えても多忙ですの。ですから今のところ会うのは十日に一回ほどのペースでかまいませんわ」
 さり気なく僕の抗議は受け流される。
「ですが、今後は時間を作っていけるようにしますわ。その間に身辺整理はつけておいてください。それまでは多少の浮気は黙認しましょう。あなたのそばにいられないわたくしにも非がありますものね」
 艶然とほほ笑みながら詰め寄られた。
 そこはかとなく静流先輩と同じ雰囲気がするんですけど、僕は大丈夫だろうか? あのね、重すぎる愛を支えきれるほど僕は強い男じゃないよ?
 チュッと頬に唇が添えられる。
「では、砕月様、また後ほど」
 そう言って歩み去っていくハルマラは景色に溶け込むように消えていった。僕はハルマラにキスされた頬っぺたに手を添える。ピンクのルージュが残っていた。呆気にとられたのも束の間で、重い沈黙がみんなを支配してるんですけど、僕、なにか悪いことした?
「さすがは兄ぃです!」
 いきなり叫ぶハピ子ちゃん。君のハイテンションぶりがよくわかりません。
「敵だったメスさえメロメロ。兄ぃは強いオスですにゃああ。にゃああああああ!」
 猫の遠吠えとか、初めて見たよ。
 しかしですね……問題は僕を白眼視で見る女の子です。
「タマ、まあ、これでみんなうまくやってけるんじゃないかな?」
「そうだね、砕月様☆」
 笑顔だけど、プレッシャーを感じてしまう。
「いや、その……なんか、怒ってる?」
「別に怒ってないし。砕月様は自意識過剰なんじゃないの? ていうか、タマさん的には問題なし、むしろ奨励かな。だって、当初の予定どおりハルマラ口説き落とせたんだしさ」
 そう言って立ち上がる。カンナちゃんも立ち上がり、僕とタマの顔を何度も往復するように見た。そして、ポンと手を叩き、えいっと僕の脛を蹴ってくる。
「え? なんで? カンナちゃん、なんで?」
 そのキックの意味がわからない。
「砕月様はこれからハルマラの相手で大変だと思うけど、がんばったら? タマさんには関係ないことだもんね。行くよ、カンナ」
「はいは~い☆ タマさんタマさん、手、つないでいいですか?」
「ほんっと、うっとうしいよね」
 悪態つきつつもタマはカンナちゃんの手をつなぐ。カンナちゃんは嬉しそうに手をブラブラとゆするように歩きだす。
「えへへ……タマさん、えへへへ。タマさ~ん」
 嬉しそうに笑いながらカンナちゃんはチラリと僕のほうを見る。タマに見えないようにあっかんべぇ、と舌を出してきた。
 よくわかんないけどカンナちゃんには敵だと認識されたらしい。
僕、がんばったのに……
「にゃおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!」
 唯一味方のハピ子は、猫のくせに遠吠えするだけだった。


◆Epilogue【夏草や つわものどもが ゲスの跡】◆
 
 僕らのいた二の丸や、さらに上にある本丸までの道は舗装されておらず、木々の間を縫いながら小道へと出なければならない。そこから神社まで下り、やっと帰れるというわけだ。なので、僕ら四人は獣道を歩いている。
 前を歩くタマに僕が声をかけようとすると、カンナちゃんがタマに話しかけて僕の発言をつぶしてくる。カンナちゃんの瞳には僕への対抗意識が灯っており、言外に「タマさんは渡さん」と言っていた。もうしかたがないからカンナちゃんに話しかけよう。
「あのさ、カンナちゃん、オピウムってなにしようとしてるか訊いてる?」
「詳しくは聞いてないよ」
 無視されなくてよかった。
「夢のなかにいたようにおぼろげにしか覚えてないんだけど、オピウム様は反魂香を使ってなにかを生き返らせようとしてるみたい。でもでも、反魂香だけじゃあうまくいかないって知って、別の方法をやるしかないって言ってた。それで、新條市に反魂香をバラ撒けって言ってきたんだ」
 その辺は鬼子ちゃんも言ってたことだ。問題は目的だ。
「バラ撒いてどうするつもりなの?」
「なんか生と死の境目を曖昧にするとかなんとか言ってたけど、それでどうするかまでは……あっ!」
「どうしたの?」
「この山を中心にしてなにかとつなげるとか言ってた! 山は異界の入口だとか……」
 獣道を抜け、小道へと出た。舗装されていない道はそのまま本丸のほうにもつながっている。
「誰っ!」
 タマが道のほうへと視線を向ける。その手には大鎌が握られていた。タマの見てるほうを僕も見る。誰もいないと思っていたけど、虚空から滲み出るように人が姿を現した。
 アルルーナさんを背負ったボロボロの義父さんだった。
「ああ、ゲッちゃんたちか……そっか、うまいこと救ってみせたんだね。やるなぁ、ゲッちゃん。それでこそ、僕の息子だ」
「どうしたのさ、その怪我!」
 駆け寄ってみれば、アルルーナさんも血だらけだった。
「アルルーナさん、大丈夫なの?」
 義父さんは苦笑を浮かべる。
「復旧作業をしてるだけだ。命に別状はない。それよりハルマラちゃんたちは?」
 タマが大鎌を消した。
「ハルマラたちなら合流ポイントに向かうとか言ってたよ」
「なるほど……いや、結果としてはそっちのほうがいいか」
 この人にしては珍しく真剣な顔をしていた。普段はヘラヘラ笑ってちゃらんぽらんとしてるけど、こうやって黙ってると凄みのようなものさえ感じてしまう。僕の視線に気づいたのか、義父さんはヘラリと笑う。
「いやいや、オッピー強くてさぁ。悪だくみをとめようとがんばったけど、逃げ帰ることしかできなかったよ。ありゃ、チートだな」
 口元はゆるいけど、目は笑ってなかった。
「ゲッちゃん、少し厄介なことになりそうだ。君に大切な人がいるなら、すぐにその人のもとに行きなさい」
「どうしたんだよ、いきなり」
「香織と莉子は僕が守るから気にしなくていい。ここでポイントを稼ぎ、冷えきった家族関係を再構築してみせる! そう、僕はピンチをチャンスに変える男、望月大和!」
「発言内容がゲツ君とかぶりまくるね、この人」
「それはものすごく心外だよ、タマ」
「ゲッちゃん、マジな目で言わないでよ。お父さん、地味に傷つくぞ☆」
 辺りが不意に暗くなった。空を見上げれば暗雲が立ち込めている。
「なに、これ?」
「あーあ、はじまっちゃったねぇ」
 小道の上、本丸のほうから人影が歩いてくる。一人じゃない。わらわらと押し寄せる波のように。あれは……
「幽霊?」
 新條市にあふれかえっている死者たちだ。でも、おかしい。あれは完全に実体化している。
「え? ディレクトリ? まさか、カンナちゃん?」
 カンナちゃんは必死になって首を横に振る。けれども、その顔は幼いながらも戦士のように引き締まっており、いつのまにか大槌を具現化していた。
「これ、ディレクトリじゃないよ」
 タマは沈痛な面持ちだ。その手には大鎌が握られている。
「じゃあ、現実世界だって言うの!? だって、あんな化け物が……」
 わらわらと死者たちが近づいてくる。タマが大きく深呼吸をして、真剣な顔で僕を見すえた。
「神蝕だよ。現実を塗りかえる狂った幻想。世界の破壊……大規模神蝕」
「……どういうこと?」
 義父さんが肩をすくめる。
「オッピーが黄泉路を開いたんだ」
 黄泉路? それってあの世への道ってこと?
「西行法師の反魂香で生と死の境界を曖昧にし、この山を異界の入り口に見立てた。ほんと、健気に暴走してくれちゃって、まあ、困ったちゃんだよ」
「それって、どうなるの?」
「どうなるもなにも神蝕ってのは望みどおり世界を描きかえることだ。描きかえられた世界は、それまでの秩序を維持できず、場合によっては崩壊する」
 言ってる意味がよくわからない。
「今のところ範囲はこの山の本丸だけ。でも、すぐに広がってくんじゃないかなぁ?」
 その言葉と呼応するように、うめき声のようなものが森のなかから響いてくる。
「これは思ってたより早いな。さっさと降りたほうがいい。ここもすぐに呑み込まれる」
 そう言って義父さんは歩きだした。
「どこ行くんだよ?」
「家族のもとだよ。さっきも言ったろ? 大切な人のもとに行けってさ」
「だって、このままじゃあ」
「対抗するにも駒も策もない。今は撤退したほうがいい。それに、これからが大変だ。黄泉醜女っていう死人さんたちが生きてる人を襲う。ゲッちゃんだって街中に幽霊みたいなのがいっぱいいるの知ってるだろ? アレが実体化してゾンビパニックだよ」
 ボコリと音がする。足首をなにかにつかまれた。青白い手が僕の腕をつかんでいる。その手を義父さんの靴が踏み砕いた。
「僕はもうゲッちゃんを一人の男だと思ってる。だから束縛はしない。でも、一緒に来るなら家族として僕が守る。そうじゃないなら、あとは自分の判断で行動しなさい」
 僕は山頂を見上げた。
 死者の群れはまるで洪水のように折り重なって迫ってきている。
 呆然と立ちすくむことしか僕にはできなかった。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
(世界崩壊の危機です! 立ちすくんでる場合じゃないぞ! 砕月!)
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モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(妄想)の女の子

motenaki
ノンストップ・ハイテンション修羅場ラブコメ!
3連発!!
「モテ泣き」シリーズ初の短編集
<日常修羅場編>登場!


世界の危機より目先の女難! 女と見ればオートで口説くゲス男・砕月の、ビョーキ炸裂な<日常修羅場編>登場だ! どんどん増える女の子たちと加速する修羅場、そして悪化(?)するビョーキ。砕月のライフはラストまで持つのか!? 「僕だって、苦しいんだよ!」「「黙れゲス!!」」。なんだかんだでモテモテな砕月君には今回、ノンストップで修羅場っていいただきます!!  公式サイト掲載「エピソード0」も同時収録!
「ゲツ君の日常って、見てて飽きないね☆(タマ)」



『モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(妄想)』
著:谷 春慶/イラスト:奈月ここ


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ちなみに主人公・望月砕月(種族人種を問わず女と見れば口説きまくるビョーキ持ち)を取り巻く状況はこんな感じ→(相関図参照)。女キャラ多すぎ!とかつっこみが怖いので、ここで「モテ泣き」をぞんぶんに楽しむための、「モテそう」登場の女性キャラクターを攻略データ付きで一挙紹介!!
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