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大間九郎

絶名のドラクロア キャラクター紹介


『絶名(ぜつめい)のドラクロア』

著:大間九郎/イラスト:十五日


「こっ、この世の中に、

乙女の生き血以上の美味

があるなんて!」  
 
「……お前さ、人間じゃないよね?」


カバー

ワーウルフ、魔道士、吸血鬼、そして普通の少年・向井竜童と奇妙な美少女  
世界の命運“絶門解錠”を巡る攻防が、今!はじまる!! 
 
平凡な日常、上手くいかない日常に飽きていた向井竜童は、
奇妙な美少女と出会い、唐突に非日常にブチ込まれる! 
――明かされる世界の真実の姿、迫られる究極の選択
――美少女の命か、世界の命運か。
すべての事から逃げ続けていた竜童の選択とは? 
美少女の秘密とは? 
スピード感溢れる展開、炸裂するジョーク&バトル。
大間九郎が放つ、ボーイ・ミーツ・ガール。疾走するニューヒーロー、ここに誕生! 


ここでは、9月10日の発売に先駆け、主要キャラクターを紹介します!
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ランジーン×ビザール テイクスリイ エピローグ(最終話)

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◆エピローグ----------------------------------------------◆

【妖精王の凱旋と後日談】

 生きることの価値、そんなものはないってのが俺の持論だ、でも価値のない人生ってわけじゃないし価値のない世界だってわけじゃない。たとえば仕事を終えて飲む冷えたビールは最高だし、そもそも仕事自体が最高だ。クラシックカーを朝から晩までいじり、直していくのは根気がいるが楽しい作業だ、何より直った車をクライアントに見せる瞬間がたまらない、クラシックカーだ、思い入れも強い、その車がまた走れるようになったことを知らされる持ち主は死んだ妻が帰ってきたような顔をするよ。そして感謝される。人に感謝されるのは悪くない、悪くない? いや最高さ。最高、この瞬間は価値ある瞬間さ。
 この工場を紹介してくれたのはファウストさんだ、仕事を紹介してくれて、住む場所を一緒に探してくれて、つまらない相談にも親身に答えてくれて俺が今こうしていられるのは全部ファウストさんがいたからだ。今生きていられるのもファウストさんがいたからだ。
 あの日俺はもう死ぬ寸前だった。手と足の指は全部折られてたし、肉はペンチでつまみ切られてたし、歯は全部折られてた。俺は死ぬ寸前だった。
 あの○○○○がいつもと違ううまそうな匂いのする飯を持って階段を下りてくる寸前にシェルターの壁がいきなり開いたんだ。隠し扉? そんなヤツらしくてあの○○○○も存在を知らなかったらしい。俺はすぐに数人のシークレット・サービスに助け出され、病院に運ばれた。その先あの家で何があったのかは知らない、知りたくもない、俺は病室で意識を取り戻すと横にはファウストさんとエディさんがいて、
「もう君は自由だよ、『ラビット』が君に危害を与えることは二度とない」
 って言ったんだ。それから俺は数か月入院し、この街に来て、この職に就いた。
 昨日の夜のニュース見たかい? 死んだらしいなあの○○○○、死んだんだよ、自殺だってさ、本当にこれで解放されたと思ったね。心の奥に、小さいけど微塵のようだけど確実にあるあの○○○○への恐怖が消えた瞬間だったよ。俺はこれで生きていける、自由に、恐怖なく生きていける。泣いたよ、声を出してテレビの前でおんおんおんおんガキみたいに泣いたよ。そしてタオルを渡され顔を拭いて抱きしめてもらって寝たよ。
 目覚めは良かったよ、最高さ、本当に見る物見る物輝いて七色に見えたよ。
 
 生きていることに理由はねえ、
 生まれたことに理由はねえ、
 あるのは目的だけなんだ。
 生きる指針は生きることだ、生き続けることだ、生き抜くことだ、死なないことだ。
 何かのために生きるんじゃねえ、自分のために生きるんでもねえ、命のために生きるんだ、自分の体の中にあるたった一つの命守るために生きるんだ。
 人生ってのはな、それ以外のなんでもねえ
 生きることにな、それ以外の理由はねえ。
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ランジーン×ビザール テイクスリイ⑤

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◆5----------------------------------------------◆

 『ラビット』が料理を持ちシェルターに下りて行くとキャスパーがいなかった。
 キングサイズのベッドにつけられた足枷は外れていた、両手の自由を奪っていた手錠は外れベットの上に転がっていた。キャスパーのために作った王冠は床に転がり、キャスパーのために作ったマントは床に投げ捨てられ、キャスパーのために作った拷問器具は壁に掛かったままだった。
 血塗られたシーツもそのままだった。
 『ラビット』はサディストではなかった。なので拷問には性的興奮を覚えなかった。拷問の目的は一つだけ、教育である。『ラビット』は自分にキャスパーの愛情が全て向くよう拷問を行いながら教育していた。
「キャスパー様? 問題ですよ? キャスパー様はなぜここにいるのでしたっけ?」
「知らねーよ! お前がさらってきたからだろうが!」
「不正解ですよ? このままでは足の指があっち向いちゃいます、あっち向いちゃいます」
「ホント勘弁してくれよ! 助けてくれよ! お前が言うことはなんでも聞くから!」
「回答になってませんよ? あっち向いちゃいます、あっち向いちゃいました」
「ひぎゃぁぁぁぁぁーーー!!!!」
「キャスパー様? 問題ですよ? キャスパー様はなぜここにいるのでしたっけ?」
「ひぎゃぁぁぁぁぁーーー!!!!」
「なぜここにいるのでしたっけ?」
「あっ!あっ!あっ!あっ!」
「あっち向いちゃいました」
「ひぎゃぁぁぁぁぁーーー!!!!」
「仕方ありませんねキャスパー様、答えを教えて差し上げます。サービスですよ、御褒美は下さいね、 キャスパー様はなぜここにいるのか? 答えは簡単です、ここが二人の愛の巣だからですよ」
「…………………」
「あっち向いちゃいました」
「ひぎゃぁぁぁぁぁーーー!!!!」
 このように教育しキャスパーを自分を愛する人間に作り直そうとしていた。続きを読む

ランジーン×ビザール テイクスリイ④

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◆4----------------------------------------------◆

 呼び出しのブザーが鳴っているのを無視して『ラビット』は台所に立っていた。作っているのはジャム、オーブンで焼いている牛肉のソースにするためのジャムだ。
 シェルターの食材は月に一度交換されているのである程度の野菜、果物がある。今作っているのはオレンジのジャム。オレンジを細かく千切りにし、大量の砂糖で煮込むありきたりのジャムだがただ焼いただけのステーキよりキャスパーの口を喜ばせるだろうと『ラビット』の心は弾んでいる。
 呼び出しのブザーが鳴る、『ラビット』は無視して、鍋の中のジャムをヘラでこね続ける。
「すいませーん、私の話を聞いていただけないでしょうかー」
 無視して『ラビット』は鍋の中のジャムをこねる。
「すいませーん、このままでは帰れないのですけどー」
 無視してジャムをこねる。
「すいませーん、そのジャム失敗しますよー」
 『ラビット』は手を止める。
「臭いでわかりますよー、そのジャム、レモンの絞り汁を足してくださいー、それと塩を少々入れてくださーい。塩は砂糖よりも先に味覚として脳に感知されますー、その味が意識に上る前に砂糖の甘みが脳を襲いますー、一度塩味を感知した脳は次に来る甘みをより強く感じるんですー。少量の塩は甘みを増し、レモンの絞り汁はジャムの色を鮮やかにしますー。臭いでわかるんですよー、そのジャム失敗しますよー」
 『ラビット』は塩を一つまみ鍋の中に入れる。かき混ぜ指先で掬い味をみる。
 確かにさっきまでより格段に甘く感じる。
 『ラビット』はレモンを探す。しかしキッチンにはレモンがない。レモンはシェルターから持って上がっていない。取りに行かなければならないが、取りに行っている間に、鍋が焦げ付いてしまうかもしれない。ジャムを台無しにしてしまうかもしれない。しかしこのままではレモンは入れられず、ジャムは失敗してしまう。
「ここを開けてくださいー、私が鍋の番をしますよー」
 ドアの向こうから聞こえる声が提案する。
 『ラビット』は少し考え、ドアを開け、外に立っていた男を家の中に招き入れた。続きを読む

ランジーン×ビザール テイクスリイ③

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◆3----------------------------------------------◆

 わたくしは確かに突飛な質問をしたかもしれません。確かに、でもなんでしょう? 知るわけねーだろ? これはないでしょう? わたくしは誠心誠意疑問をぶつけているのです、ボケ? ボケって、わたくし、アマンダ・テールノーズの頭の中から生まれてこのかたこれほど汚い言葉で罵られたことはありません。ボケって、さすがに傷つきます。
「お前何言ってるの? バカなの? メンタル病んでるの? 自分探しならインドに行けよ、俺に聞かずガンジス川に聞けよ」
 あれ? なんででしょう? 罵られ続けています。
「なんなの? ヨガやれよ、悟りとか開けよ、ほらあれやれよあれ、ゼン? そんな感じのあるから、俺知らねーけどあるから、足とか組んで解放されろよ、宇宙と繋がっちゃえばいいじゃん」
 宇宙と? 繋がる? それはそれで魅力的な話です。
「宇宙と繋がれるのですか?」
「繋がれるはずないじゃん、お前宇宙のことなんだと思ってるの? 宇宙って空間だよ?どうやって繋がるの? やっぱりバカなの? メンタルボロボロなの? 死ぬしかないの?」
 あ、やっぱりバカにされてる。完全にバカにされてる。
 今まで幾人の方々に質問をしてきました。御教授下さい、御教授下さいと幾人の方々に聞いたか分かりません。今まで得心いく答えは得られていませんし、得心いく答えを提示したかたはいらっしゃいませんでした。しかし、しかしです、質問にお答えいただいた方々は皆真剣にお答えくださいました。それぞれの立場から真剣にわたくしに御教授下さいました。でもなんでしょう? 完全にバカにされています。こんなケースは初めてです。感心すると言うか、考え深いというか、心の奥底から湧き出るこの感情はなんなのでしょう? なんというか、絞殺したいです。
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ランジーン×ビザール テイクスリイ②

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◆2----------------------------------------------◆

「動くな」
 俺はこういったはずだ、俺は「動くな」と言って頭が狂っているとしか思えない真っ白な格好をした女の首にカッターナイフを押し当てたはずだ。でも今は空を見てる。あれ?なんで? なんでこうなったの? 視界に入るのは空だけ、青く、雲一つない空は高く高くどこまでも高く俺の視界の中は青しかなかった。
「目を覚まされましたか?」
 澄んだ声が左耳の鼓膜を揺らし俺は声のほうに視線を向ける。向けようとする、しかし体が動かない、視線一つ動かせない、体中の筋肉が硬直して全く身動きが取れない。
「毒ですよ」
 毒?
「体が動かないのは毒のせいです。申し訳ありませんがわたくしは空が見たいのです。澄んだ、何も邪魔するもののない視界全ての空が見たかったのです。そのためにはあなたが動いて私の視界に入ると邪魔ですので動きを止めさせていただきました。なに、意識を取り戻されたのならじき喋ることもできるようになるはずです」
 視界は動かない、瞼も閉じられない、舌も動かない、体中どこも動かない。女の声は左耳から聞こえるが目視することはできない、きっとさっきの真っ白な女の声だと思うが確認はできない。
 恐怖。続きを読む

ランジーン×ビザール テイクスリイ①

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ランジーン×コード・インスパイテットストーリー
ランジーン×ビザール
テイクスリイ


ブレスオブライアー・キスオブライアー

◆1----------------------------------------------◆
 【ラビットの苦悩】

 わたくし『ラビット』は生きていく指針を失いそれでも生きておりました。十八歳、わたくしがアマンダ・テールノーズの体から生まれて十年が経っていました。
 わたくしが手掛けた混乱の国、アメリカ合衆国はその混乱を深めていました。混乱の国アメリカ、人が死に、人が狂い、人が苦しむ国アメリカ、わたくしは成し遂げました。しかしそこに達成感も、多幸感も恍惚もありません。わたくしは従い成し遂げただけ、わたくしはこのアメリカになんの感傷もありませんでした。
 朝、目を覚まします。睡眠の終わりと共に一日が始まります。
 最初にやることは目を開けること。起き上りベッドを出てカーテンを開き窓を開けます。青空でした。澄み渡るほどの青空、雲一つない青空、ただわたくしには関係のないこと。興味もありません。澄んだ大気、わたくしの頬を撫でる凛とした冷たい空気と冷気、ただわたくしには関係のないこと。興味もありません。わたくしは耳を澄ませ頭の声を聴きます。でも頭の中の声は聞こえません。わたくしに何も命じてはくれません。わたくしはこの先、生きる方法が分かりません。死ねと言われているのでしょうか? ただアマンダ・テールノーズの肉体が滅びるのを待てと言っているのでしょうか? 分かりません。何も分かりません。
 声が聞こえなくなってからわたくしは誰とも会ってはいません。誰とも会わず、ここメンフィスの郊外にある家で一人暮らしております。声が聞こえなくなってから多くの人に会いました。いろいろなかたにいろいろなアドヴァイスをいただきました。私の生きる指針を、いろいろなかたが真剣に考えてくださいました。しかしどのかたのアドヴァイスも得心のいくものではありませんでした。
 御教授下さい、御教授下さい、御教授下さい、何人ものかたに、何百回とこの言葉を述べたでしょう。しかしわたくしが得たい本質は誰一人として理解しておらず、誰もわたくしに生きる指針を御教授下さいませんでした。
 生きることとはなんなのか、生きていることになんの意味があるか、わたくしはこの本質に触れられず今まで口を汚してまいりました。
 声は聞こえません。わたくしに生きる道しるべはもう存在しません。

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ランジーン×ビザール テイクスリイ プロローグ

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◆プロローグ----------------------------------------------◆

「なぁお前最近セックスした?」
「してねえよ」
「そりゃそうか、セックスできるのは金持ちだけだもんな」
「お前したのかよ?」
「それがしたんだわ」
「マジで?」
「マジで」
「誰と?」
「誰とか聞きたい?」
「そりゃ聞きたいわ」
「お前知らないほうがいいと思うよ」
「なんでよ?」
「いや俺だったら凹むから」
「何がよ?」
「いやこんな話なんでお前にしてると思う?」
「は?」
「いや俺って働いてるじゃん?」
「工場で流れ作業だろうが! 底辺労働者が!」
「でも俺はお前と違うの、俺は日給が出るし、アパート借りてるし、車もあるの」
「だからなんだよ?」
「だから女が寄ってくんだよ」
「どっかの年増かブスだろうが!」
「年増? まぁ年増は年増だけど、ブスじゃないぜ、お前の母ちゃんはよ」
「は? お前何言ってんの?」
「俺お前の母ちゃん囲ってるから、毎日やりまくり、お前の母ちゃんスゲーフェラうまいのな、昨日の夜セックスしながら『ごめんねキャスパー! ママ淫乱でごめんね!』って泣きながら腰振ってたぞ」
「お前ふざけんなよ!!」
「てめえの母ちゃんはお前より俺のほうがいいんだとよ! 死ねよキャスパー! さんざん俺のことバカにしやがってよ! お前の母ちゃんはクソ豚でお前はクソ豚の息子だ! その内ユーチューブでお前の母ちゃんのポルノが全世界に配信されるから覚悟しとけよクソ豚の息子が!」
「うるせえ! 死ねよ!」

 これが殺人の動機。 
 これが犯罪者としての俺の始まり。
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ランジーン×ビザール テイクテイクスリイ公開! 

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ランジーン×コード・インスパイテットストーリー
『ランジーン×ビザール
 テイクスリイ』

を本日より、スペシャルブログにて公開!

2月5日発売のtale.5でいよいよクライマッスを迎える『ランジーン×コード』。
その発売を記念して、
バックアップ企画第三弾、『ランジーン×ビザール テイクスリイ』を公開。

『ファンダ・メンダ・マウス』の大間九郎氏が描く『ランジーン×コード』の世界。
『ランジーン×ビザール』ここに完結。

本日より5日間連続連載!

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ファンダ・メンダ・マウス (このライトノベルがすごい!文庫)ファンダ・メンダ・マウス
著者:大間 九郎
販売元:宝島社
(2010-09-10)





ファンダ・メンダ・マウス2 (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫)ファンダ・メンダ・マウス2
著者:大間 九郎
販売元:宝島社
(2011-03-10)

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ランジーン×ビザール テイクトゥ⑨(最終話)

ランジーン002

◆9----------------------------------------------◆

 レディオは背中の圧力伝導フィルムから送られてくる情報を脳内に拡散し、収束させることに全精神を集中させていた。

 情報の拡散と収束。

 背中に入る情報はサイレント・タンたちがテレビを見ながら、会場から、スタッフルームに忍びこんで、テレビ中継の中継車を傍受して、俺の体の中に埋め込まれた筋電計や、バイタルチッカーからの情報を読み取って次から次へと送ってきてくれている。三十六枚の圧力伝導フィルムから伝わる情報量は莫大で、俺が目にし、聞き、肌で感じる情報と合わせ拡散させ、収束させる。情報は多いほうがいい、大量の情報は外部環境として俺に意志決定をさせていく。

 人間には思考による自由意思決定は存在しない、存在してもその選択肢はとても少ない。

 人間の行動のほとんどは、外部から入力される情報によって決定される。

 人間の行動は環境が決める。

 この考えに則るならば外部環境である情報は正しく、洗練されていて、膨大であればあるほど、得られる結果は大きなものになることが約束されている。情報なのだ、精査された情報とそれを理解できる脳内環境と、行使できる肉体、最大の結果を得るために必要なのはそれなのだ。
 俺は鎮魂の刃だ、刃であるがゆえに意思は必要ない。与えられた環境に準じ、走り、跳ね、当たり、飛ぶのだ。喉元に届くまで俺は喉元に俺という刃が届くまで走り続ければいいのだ。考えるな、考えろ。委ねろ、委ねるな。自律するな、全てを自律の上に成り立たせろ。矛盾を内包した天秤を丁度平行に保ちながら走れ、走れ、走れ、走れ、走れ、切っ先が喉元に届くまで。
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