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セクステット 白凪学園演劇部の過剰な日常

『セクステット』書き下ろし特別短編 第四幕『英語力の限界』

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■本編のあらすじ、登場人物紹介はこちら■


 ある日の夜。自分の部屋で机に向かいながら、スズメは頭を悩ませていた。
 そこへ、近所に住むアヒルが勝手に入って来た。アヒルは焼き芋の入った紙包みを抱えている。スズメのために差し入れを持ってきたのだ。どうだ、一休みして食べないか、と声をかけるが、机に向かって集中しているスズメはまったく反応を示さない。
 面白くないアヒルは、紙包みから焼き芋を一つ取り出すと、おもむろにそれをスズメの首筋にくっつけた。
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『セクステット』書き下ろし特別短編 第三幕『しゃぶしゃぶの秘密』

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■本編のあらすじ、登場人物紹介はこちら■


 昼休みの間、アヒルはずっとなにも食べずに屋上でモモを待っていた。朝のウチに呼び出しのメールを送っていたのだ。屋上の真ん中でしっかりと目を閉じて、長い黒髪を風にたなびかせながら仁王立ちしていた。
 昼休みも後半に差し掛かって、ようやくモモが屋上に姿を現した。アヒルと二人だけでこっそり会うなんて、初めてのことだったので、どこか不安そうな表情をしている。
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『セクステット』書き下ろし特別短編 第二幕『赤服の略奪者』

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■本編のあらすじ、登場人物紹介はこちら■


 夕方、ツバキとスズメは近所の公園のベンチで休んでいた。学校からの帰り道、モモと別れた後で、ツバキがここで少し休みたいと言い出したのだ。もうすぐ家に着くでしょ、とスズメは最初反対したが、妙に陰気なツバキの態度に引きずられて、一緒に公園に残ることになってしまった。
 不機嫌そうに座るスズメの横で、ツバキはずっとため息ばかり吐いている。
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『セクステット』書き下ろし特別短編 第一幕『女子の成分』

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■本編のあらすじ、登場人物紹介はこちら■


 二年四組。
 始業のチャイムを目前に控えた教室は、生徒たちのざわめきに満たされていた。
 モモの席は、一番窓際の列のちょうど真ん中にある。そのすぐ後ろがツバキの席なのだが、今日はまだ姿を見せていない。モモは背後の空席を気にしながら、不安そうに呟いた。
 
「……ツバキちゃん、遅いなぁ……今日は、お休みなのかな?」

 モモのか弱い独り言が周囲の騒音に掻き消されるのと同時に、教室の引き戸が開き、肩を落としたツバキがよたよたと教室に入ってきた。

「――あ、ツバキちゃん。おはよー。どうしたの今日は? また朝寝坊しちゃった?」
「……ああ、悪い……なんかもう、一歩も動きたくない気分でさ……」
 
 ツバキはそのまま崩れ落ちるように席に着き、上半身を机に伏せる。モモは椅子を回して背後に向き直ると、ツバキの頭頂部に向かって、心配そうに話しかけた。
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